休業損害はいつまでもらえる?症状別の期間の目安や証明書の書き方を解説

休業

交通事故で仕事を休んでいる場合に、休業損害がいつまでもらえるのか疑問ではありませんか。

交通事故で仕事を休んだ場合には、収入が得られない代わりに休業損害を請求できます。そして、結論から言うと、休業損害は症状固定までの期間で、休業の必要性・相当性がある期間請求することができます。そして、症状や職業によって、休業損害が請求できる期間の目安もある程度決まっています。

また、休業損害を請求するタイミングや計算方法にもある程度決まりがありますし、労災や人身傷害保険では扱いが異なることもあります。

この記事では、休業損害がもらえる期間、休業損害を適切な期間受け取るためにすべき3つのこと、休業損害がもらえるタイミング、労災や人身傷害保険で休業損害がもらえる期間等について解説しています。

この記事でわかること

  • 休業損害がいつまでもらえるのか
  • 【症状別】休業損害がもらえる期間の目安
  • 【職業別】休業損害が支払われる期間と計算方法
  • 休業損害を適切な期間受け取るためにすべき3つのこと
  • 休業損害が支払われるタイミング
  • 労災の休業補償を請求できる期間
  • 人身傷害保険の休業損害が支払われる期間

休業損害はいつまでもらえるのか

期間

休業損害とは、事故の怪我や通院のために仕事を休んだことに対する賠償のことです。

休業損害は、治療期間中(症状固定まで)の間に仕事を休んだことを賠償するもので、症状が治癒したり症状固定までの期間、つまり治療期間中は請求できます

治療期間中であればいつまでも休業損害が支払われるわけではなく、怪我の程度や治療状況から、休業の必要性・相当性がある期間についてのみ休業損害が支払われます。

したがって、医師から休業の指示もなく、治療を続けているが仕事はできる状態であれば、休業損害が認められない可能性もあるので、職場復帰した方がいいでしょう。

逆に、医師や職場から、怪我の程度に鑑み仕事に復帰しないように言われている場合には、休業の必要性・相当性が認められる傾向にあります。

なお、休業して有給休暇を使用した場合にも休業損害を請求することができます。有給休暇と休業損害の関係については、以下の記事で解説しています。

有給休暇で休業損害を請求できる?計算方法や請求方法、欠勤との損得も解説

休業損害とは、事故のために仕事を休んで、給料が減ったことに対する賠償のことですが、有給休暇を取得した場合にも休業損害を請求することができます。この記事では、有…

【症状別】休業損害がもらえる期間の目安

休業損害がもらえる期間は、休業することの必要性・相当性をもとに判断されますが、症状の程度によってある程度目安の期間が決まってきます。

この章では、交通事故の症状として多い、

  • むちうち
  • 骨折

の場合の休業損害がもらえる期間の相場について解説します。

むちうちの場合の休業期間の相場

むちうちの女性

むちうちとは、追突事故などによって頸椎等が過伸展過屈曲することによって生じる、頸椎や腰椎の捻挫、打撲のことです。

むちうちの治療期間の目安としては、3か月~半年程度と言われていますが、ヘルニア等症状が重い場合には、1年近く治療が必要なケースもあります。

むちうちの場合には神経症状(痛みやしびれ)が中心ですので休業しない人も多いですが、休業するとしても1か月から3か月程度で職場復帰する方が多いです。

なお、むちうちの場合には休業しない人も多く休業の必要性・相当性が問題となりやすいので、医師に仕事内容を伝えたうえで、休業した方がいいのか判断を仰ぐようにしましょう。

特に仕事中に車を運転する機会が多い職業については、後方確認等で首を頻繁に回す関係で、むちうちの症状が長引いてしまうことから、安静にするよう指示されるケースが多いです。

骨折の場合の休業期間の相場

骨折

骨折には、骨が折れている単純骨折、骨が粉砕している粉砕骨折、骨がつぶれたようになっている圧迫骨折、健や靭帯の結合部から骨がはがれている剥離骨折などがあります。

骨折した場合には、基本的には①整復➡②仮骨の形成➡③リハビリ、と進んでいきます。骨折の部位や状態にもよりますが、最終的にリハビリ終了までには半年から1年以上かかるケースが多いです。

骨折の場合には、一般的には②仮骨形成するまでは安静にするよう指示を受けることが多いので、その間は休業の必要性・相当性が認められる傾向にあります。

もっとも、骨折部位や職種によっては仕事になんら影響もないこともあるので、すぐに職場復帰する方もいます。

どちらにせよ、休業の必要があるかについては医師の判断を仰いだ方がいいでしょう。

【職業別】休業損害が支払われる期間と計算方法

期間

休業損害は基本的には以下の計算式によって算定されます。

計算式)休業日数×日額

もっとも、業種によって計算方法も異なるので、以下で詳しく解説します。

なお、自賠責保険に休業損害を請求した場合の自賠責基準の場合には、日額は6100円とされていますが(事故が令和2年4月1日以降の場合。それ以前の事故は日額5700円)、立証資料等により日額が6100円を超えることが明らかな場合には、1万9000円を上限として、その実額が日額となります。

会社員の場合

会社員が休業損害を請求できる期間は、職種によって異なります。

通常の営業職や事務職であれば1か月程度現場労働の仕事であったり、トラック運転手、タクシー運転手の場合には安静にするために2~3か月程度休業することも多いです。

会社員の場合には、会社に休業損害証明書を作成してもらって休業損害を請求していきます。また就労していた事実を示すため、事故前年度の源泉徴収票を提出する必要があります。

日額は、事故前3か月分の給料を90で割った金額で算出します。

休業日数は、仕事を休んだ日、有休を使用した日、遅刻早退した時間のことであり、代休は休業日数に含まれません。

休業損害証明書の書き方

休業損害証明書のひな形は以下のようなものです。

休業損害証明書

①この欄は休業した期間を記載する欄になります。

連続休業ではなく、数日おきに休業した場合でも、最初に休業した日と最後に休業した日を記載してもらいましょう。

なお、毎月休業損害証明書を作成してもらう場合には、記載してもらう期間のみを対象として休業の始期と終期を記載してもらいましょう。

②この欄は、休業(欠勤)した日数、半休(半日欠勤)した日数、有給休暇を取得した日数、遅刻・早退した総日数を記載してもらいましょう。

なお、毎月休業損害証明書を作成してもらう場合には、記載してもらう期間のみの日数を記載してもらうようにしましょう。

③この欄は、実際に給料した日を特定するための表になっています。休業(欠勤)の場合は〇、有給休暇の場合には◎、半日休暇なら〇に斜線、半日有給休暇なら◎に斜線、遅刻・早退した日は△、勤務先の所定休日には×、を記載してもらいましょう。

何も記載していない日は出勤した日となります。

なお、休業損害を3か月以上請求する場合には、この用紙をコピーして、続きを記載してもらうようにしましょう。

④この欄は、休業(欠勤)した日に給料を支払ったかどうかを記載します。

なんらかの事情で給料をもらっている場合には、損害がないとして休業損害を請求できません。

⑤この欄は、事故前3か月間の給料、稼働日数を記載してもらう欄になります。

「本給」とは基本給のことで、「付加給」とは手当や残業代のことと理解すれば足ります。

また、社会保険料等を差し引いた「差引支給額」が手取り金額のことです。

この欄を参考にして休業損害の日額を計算します。

⑥この欄は、労災や傷病手当金などを受け取っている場合に、その金額を記載する欄になっています。

休業損害を請求する際には、労災から支給された休業補償給付や傷病手当金は控除することになっているため、受領している場合にはこの欄に記載が必要です。

最後に、勤務先の担当者名等を記載してもらって完成です。

主婦(主夫)の場合

仕事を休む

主婦についても、他人のために家事をしていることに経済的価値があるとして、主婦業ができなかったことに対して休業損害を請求することができます。主婦業を行っていることそのものは立証できないので、家族構成表や住民票から家族構成を立証することになります。

主婦の休業損害については、事故の怪我によって家事労働に影響が生じている期間休業損害を請求でき、基本的には治療期間の全てにわたって休業損害を請求できます。

主婦の場合には、どこかから給料をもらっているわけでもないので、日額は、事故前年度の賃金センサスの女性全年齢計学歴計の年収を365で割って算出します。

休業日数については、通院日数を休業日数として計算する方法もありますが、実際には通院していても家事の一部を行うことは可能だったので、怪我の程度から家事への影響割合を仮定して、逓減方式で算定することもあります。

計算例)通院期間60日。うち初めの30日の家事への支障割合が70%、残りの30日が40%と仮定した場合

(日額×30日×70%)+(日額×30日×40%)

なお、主婦の休業損害については算定が難しいので、弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

自営業者の場合

自営業者の場合には、怪我によって仕事に支障が生じていた期間休業損害を請求でき、基本的には事務作業等が中心であれば1か月程度現場労働の仕事であったり、トラック運転手、タクシー運転手の場合には安静にするために2~3か月程度休業することが多いです。

自営業者の場合には、通常は、日額は事故前年度の確定申告書の申告所得を365で割って算出し、休業日数は、通院日や、売上帳等から休業日数を特定して算定するなどします。

また、事故前3年分の平均所得と事故当年の所得を比べて、その差額分を休業損害として算定したりもします。

アルバイト・パートの場合

アルバイト・パートの場合には、怪我の程度にもよりますが、2か月程度休業することが多いです。

この場合も、勤務先に休業損害証明書を作成してもらって休業したことを主張していきます。

もっとも、この場合に日額を90日で割って算出すると金額が不当に低くなってしまうので、時給×1日の勤務時間、等によって日額を算定したりします。

休業損害を適切な期間受け取るためにすべき3つのこと

これでOK

休業損害を受け取れる期間の相場はある程度決まっていますが、漫然と休業損害を請求しても適切な期間の休業損害受け取れるとは限りません。

この章では、休業損害を適切な期間受け取るためにすべき3つのことについて解説します。

  • しっかりと治療を行う
  • 休業について医師に相談する
  • 休業していたことを示す証拠を残す

しっかりと治療を行う

休業損害は、治療期間に仕事を休んだ場合に請求することができます。

もっとも、治療にあまり行かないために治療期間が不当に伸びてしまったり、治療実績が少なく治療の必要性がないのではないかと疑われてしまう場合には、休業の必要性がなかったとして休業損害を請求できなくなってしまいます

したがって、休業の必要性を主張するためにも、しっかりと病院に通院し治療を受けるようにしましょう。

休業について医師に相談する

休業損害については、休業の必要性・相当性が認められる場合に請求することができます。

そして、怪我の程度によって休業した方がいいのかについては、治療の専門家である医師が一番適切に判断することができます。

医師が怪我の状況に鑑み休業した方がいいとの意見を言ってくれるのであれば休業の必要性が高まりますし、怪我の程度から休業の必要もなく復帰しても良いとの意見であれば休業の必要性が低くなります。

したがって、仕事の内容を伝えたうえで休業した方がいいか医師に相談するようにしましょう。

休業していたことを示す証拠を残しておく

休業損害を請求する際には、休業していたことを被害者が主張立証する必要があります。

会社員やパート・アルバイトの場合には、勤務先が休業していたことを証明してくれるので問題になりませんが、個人事業主や主婦の場合には、休業を証明してくれる人がいませんので、休業していたかどうかが問題となります。

この場合には、個人事業主の場合には日報等で、主婦の場合には日記等で、仕事や家事ができなかったことや日付を記録として残しておくようにしましょう。

休業損害はいつのタイミングでもらえるのか

ベストタイミング

休業損害は、交通事故の損害賠償金なので、原則として、慰謝料等と一緒に示談時に受け取ることができます。

もっとも、休業損害はもらえないと生活にも影響してしまうため、加害者側に任意保険が付帯してる場合には、任意保険会社の担当者次第ですが、毎月休業損害証明書を提出することにより、休業損害を毎月支払ってもらえる可能性があります。

したがって、休業損害を毎月支払ってほしい場合には、保険会社に相談するようにしましょう。

なお、主婦や有給休暇を使用した場合には、休業損害を支払ってもらえなくても生活に影響しないため、休業損害は原則通り示談時に慰謝料等と一緒に支払われることになります。

労災の休業補償を請求できる期間

交通事故が勤務中や通勤退勤途中に発生した場合には、労災の対象にもなります。

労災においては、仕事を休み給料が支払われなかった場合には「休業補償」という形で賠償がされ、給付基礎日額の80%(うち20%は特別支給金)が支払われることになります。

休業補償の期間の上限は決まっておらず、治療期間に仕事を休んでいた場合には休業補償が支払われます

もっとも、労災には「待機期間」があり、休業初日から3日目までは休業補償を支払ってもらえず、休業4日目から休業補償を請求することができます。

人身傷害保険で休業損害が支払われる期間

人身傷害保険とは、被害者自身が加入している保険のことであり、自動車事故によるご自身や同乗者の方のケガの治療費(実費)や、後遺障害による逸失利益や介護料、精神的損害、働けない間の収入等を過失相殺による減額無しに補償する保険のことです。

そして、人身傷害保険における休業損害が支払われる期間は、保険会社が休業の必要性・相当性があると認めた期間となります。

したがって、人身傷害保険に対して休業損害の請求を行い、保険会社の判断を仰ぐようにしましょう。

交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!

コールセンター

交通事故賠償金交通事故の被害に遭ってしまった場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、適切な金額の休業損害を請求できない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。

そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。

したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。

交通事故では弁護士に示談交渉を依頼するメリットが大きい

弁護士に示談交渉を依頼すると、保険会社との交渉を弁護士にすべて任せることができるため、交渉に対する心理的ストレスから解放されます。また、慰謝料について保険会社が採用している基準と弁護士が使用する基準では金額が大きく異なり、弁護士に交渉を依頼した方が最終的に受け取れる示談金も多くなります。

よって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。

法律事務所Lapinが選ばれる理由!

弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。

法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。

また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。

まとめ

いかがだったでしょうか。休業損害が請求できる期間の目安が理解できましたでしょうか。

休業損害は基本的には症状固定までの期間休業の必要性・相当性が認められる期間について請求することができます。

また、休業損害を適切な期間支払ってもらうために

  • しっかりと治療を行う
  • 休業について医師に相談する
  • 休業していたことを示す証拠を残す

という点に注意するようにしましょう。

休業損害は、もらえないと生活にも影響してしまいますので、加害者に保険会社がついている場合には、休業損害を毎月支払ってもらえないか相談してみましょう。

休業損害の金額や、支払期間について納得できない場合には、一度は弁護士に相談するようにしましょう。

投稿者プロフィール

弁護士
弁護士 河井浩志
法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。