交通事故で生じるむちうちの症状と請求できる慰謝料や後遺障害、治療期間を解説
交通事故の被害に遭った場合に、一番発生しやすい症状がむちうちの症状です。特に、車に乗車中に追突事故の被害に遭うとむちうちの症状が生じることが多いです。もっとも、症状として発生することが多いので、むちうちの場合の治療期間や慰謝料、後遺障害の相場はある程度決まっています。ただ、事故直後から適切な対応をしていなければ、相場通りの適切な賠償金を獲得することはできません。
この記事では
- むちうちの症状と治療期間の目安
- むちうちでもらえる慰謝料の相場
- 治療を続けたけれども症状が残った場合に認定される後遺障害等級
- むちうちの場合に適切に慰謝料をもらうために意識すべき3つのこと
について解説しています。
この記事を読めば、交通事故のむちうちの賠償金等について幅広く理解できるでしょう。。
目次
むちうちの症状と治療期間の目安
むちうちとは、追突事故などにより首が前後に揺さぶられ、過伸展・過屈曲を起こし、頸椎や神経などを損傷してしまう症状の総称のことをいいます。
むちうちでよくある症状
むちうちになってしまった場合の症状としては
- 首の痛み
- 頭痛
- 耳鳴り
- めまい
- 吐き気
- 疲労感・倦怠感
- 首や腕などのしびれ
- 首や腕などの麻痺
- 首や肩の凝り
などがあります。
また、これらの症状のせいで、日常生活に支障が生じることも多く、長時間の作業が困難となったり、首を横に向けることができないなどの症状が出ることもあります。
むち打ちの治療期間の目安
むち打ちの場合には、神経や頸椎の損傷が画像によって判断できる程度のものであるか、腕のしびれや麻痺が生じているか等によって症状の軽重は異なりますが、一般的には3か月から半年程度継続して通院しているケースが多いです。
また、保険会社が治療費を負担してくれる期間として、3か月や半年が1つの目安の期間とされています。
一般的に、半年通院を継続しても痛み等の症状が残る場合には、後遺障害等級が認定される可能性があります。
むち打ちの症状が出た時の通院先
むち打ちの症状については、基本的には整形外科に通院することになります。なお、初回は救急搬送などされて総合病院に通院した方については、総合病院の場合だと予約が取りづらく、適切な頻度で通院できないことも多いので、紹介状を書いてもらってクリニックなどに転院した方が通院しやすくなるでしょう。
なお、むち打ちの症状の場合の通院先として整骨院や接骨院に通院する方もいますが、整骨院等では医師ではなく柔道整復師が、施術を行ってくれるだけであり、治療ではないとして施術費を保険会社が支払ってくれなかったり、後遺障害が残った場合に後遺障害診断書を書いてもらえないなどの不利益もありますので、あまりお勧めはできません。
むちうちで通院した場合にもらえる慰謝料の相場
交通事故によってむち打ちとなってしまった場合には、そのことに対して慰謝料を請求することができます。もっとも、どの程度の精神的苦痛を負ったのかは客観的にわからないので、一般的に通院期間や回数によって慰謝料を計算することになります。そして、慰謝料の算定基準には、金額の小さい方から自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準があります。
自賠責基準
これは、強制加入である自賠責保険が定めている基準のことで、①治療期間、②通院回数×2を比べて、どちらか少ない方に4300円をかけることによって慰謝料を算定する方法です。
式) ①or②×4300円
例えば、3か月間(90日)通院し、通院回数が20回の場合には、①90>②40となるため、40×4300円=17万2000円が慰謝料の金額となります。
任意保険基準
これは公表されていませんし、保険会社によって異なりますが、一般的には自賠責基準よりは少し高く、弁護士基準よりは低い金額とされています。
被害者の方が保険会社と直接交渉して提示される金額としては、この任意保険基準か自賠責基準で提示を受けるケースが多いです。
弁護士基準
これは、裁判した場合に裁判所が認定する金額のことで、裁判基準ともいいます。基本的には通院期間によって下記の表から算定します。骨折等の他覚所見がある場合には別表Ⅰを、むちうち等の他覚所見がない場合には別表Ⅱを用います。
なお、通院頻度が少ない場合には、通院回数の3倍を慰謝料の算定期間とすることもあります。
むちうちで治療を続けたけれども症状が残った場合に認定される可能性のある後遺障害等級
むちうちの症状がひどく、半年程度通院したけれども症状が残っている場合には、後遺障害等級が認定される可能性があります。
むちうちで認定される可能性がある後遺障害等級は、14級と12級があります。
14級9号
14級9号に認定される要件は、「局部の神経症状」が残存していること、です。これは、痛み等が医学的に説明可能かどうかによって判断されます。症状の一貫性や治療の継続性によっても判断されますが、治療内容、治療期間、事故状況、他覚的所見の有無等によって総合的に判断されます。
12級13号
12級13号に認定される要件は、「局部に頑固な神経症状」が残存していることです。これは、痛み等が医学的に証明可能かどうかによって判断されます。14級9号の要件に加え、他覚所見によって痛み等が証明できるか、によって判断されます。
後遺障害慰謝料
上記のような後遺障害等級に認定された場合には、後遺障害慰謝料を請求できます。後遺障害慰謝料にも、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準がありますが、弁護士基準の金額は以下のとおりです。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは後遺障害のために将来の仕事に支障が生じ、そのために将来の収入が減少する可能性があることに対する損害賠償のことです。
これは以下の計算式によって算定します。
式)
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入は、原則として事故前年度の年収を参照します。
労働能力喪失率とは、後遺症によってどの程度仕事に支障が生じるかを定めたものになります。
労働能力喪失期間とは、後遺障害が労働能力に影響する期間のことであり、通常は67歳までの期間のことをいいます。もっとも、むちうちのような神経症状の場合には、時間経過により症状が順化し、労働能力に影響が出なくなると考えられていることから、14級の場合は5年、12級の場合には10年程度に限定されています。
例えば、年収600万円の人が交通事故によって腰痛の後遺障害が残り、後遺障害等級14級に認定された場合の後遺障害逸失利益は
600万円×5%×4.58=137万4000円
となります。
むちうちと診断された場合に適切に慰謝料をもらうために意識すべき3つのこと
むちうちと診断されたとしても、適当に通院しているようでは相場通りの慰謝料を獲得することはできません。
この章では、適切に慰謝料を獲得するために意識すべき3つのことについて解説します。
整形外科にしっかりと通院する
むちうちの診断を受けた場合に、通院を疎かにする人もいますが、慰謝料は通院期間や回数によってある程度算定されますので、医師の指導のもと、しっかりと通院するようにしましょう。
通院は多すぎても少なすぎてもだめ
慰謝料が通院期間や回数によって決まるからと言って、1年以上通院し続けたり、毎日通院するような人もいます。もっとも、少ない頻度で長期間通院を続けたり、頻繁な頻度で通院をしている場合には、慰謝料目的で通院しているのではないかと疑われてしまいます。
慰謝料が通院期間や回数によって決まるということは意識しておく必要がありますが、通院については医師と相談のうえ、適切な頻度で行うようにしましょう。
弁護士に示談交渉を依頼する
適切に通院ができたとしても、弁護士基準で慰謝料を獲得できなければ、適切な慰謝料を獲得することはできません。この点、被害者の方が保険会社と直接交渉しても、保険会社は弁護士基準での慰謝料を支払ってくれるわけではありません。弁護士基準で慰謝料を獲得するためには、訴訟提起するか、弁護士に示談交渉を依頼するかですが訴訟提起するのは手間なので、弁護士に示談交渉を依頼するようにしましょう。
むちうちの場合の損害賠償額シミュレーション
この章では、むちうちで適切に通院した場合の損害賠償額のシミュレーションを行います。
むちうちで3か月通院したケース
むちうちで3か月(90日)通院し、通院回数が35回の場合の損害賠償額の目安は
治療費 | 18万円 |
交通費 | 1万4000円(バスで通院。片道200円) |
休業損害 | 21万円(日給1万5000円の仕事を14日間休業した場合) |
慰謝料 | 53万円 |
合計 | 93万4000円 |
となります。
なお、治療費を保険会社が支払ってくれている場合には、治療費分は請求金額から差し引いて請求することになります。
むちうちで6か月通院し、後遺障害等級14級が認定されたケース
むちうちで6か月通院し、通院回数が70回、後遺障害等級14級が認定された場合の損害賠償額の目安は
治療費 | 45万円 |
交通費 | 2万8000円(バスで通院。片道200円) |
休業損害 | 60万円(日給2万円の仕事を30日間休業した場合) |
慰謝料 | 89万円 |
後遺障害慰謝料 | 110万円 |
後遺障害逸失利益 | 137万4000円 式)600万円×5%×4.58(労働能力喪失期間5年のライプニッツ係数) (事故前年度の年収が600万円の場合) |
合計 | 444万2000円 |
となります。
なお、治療費を保険会社が支払ってくれている場合には、治療費分は請求金額から差し引いて請求することになります。
交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!
交通事故の被害に遭ってむちうちの診断を受けた場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。
そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。
したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
交通事故では弁護士に示談交渉を依頼するメリットが大きい
弁護士に示談交渉を依頼すると、保険会社との交渉を弁護士にすべて任せることができるため、交渉に対する心理的ストレスから解放されます。また、慰謝料について保険会社が採用している基準と弁護士が使用する基準では金額が大きく異なり、弁護士に交渉を依頼した方が最終的に受け取れる示談金も多くなります。
よって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
法律事務所Lapinが選ばれる理由!
弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。
法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。
また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。
法律事務所Lapinでは弁護士費用特約も利用可能!
自身の保険や、ご家族の保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、それを利用することによって、基本的に自己負担なく、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することができます(弁護士費用の300万円まで保険会社が負担するため)。また、弁護士費用特約はノンフリート等級なので、翌年の保険料にも影響はありません。
法律事務所によっては、報酬基準の違いで弁護士費用特約を利用できない場合もありますが、法律事務所Lapinでは基本的に弁護士費用特約を利用してご依頼いただくことが可能です。
まとめ
いかがだったでしょうか。交通事故でむちうちの診断を受けた場合に適切な賠償金を獲得する方法が理解できましたでしょうか。
治療に関することをまとめると
- むちうちの治療期間の目安は3か月から半年程度
- むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級は14級か12級
むちうちで適切な慰謝料を獲得するポイントは
- 整形外科にしっかりと通院する
- 通院は多すぎても少なすぎてもだめ
- 弁護士に示談交渉を依頼する
となります。
特に、弁護士費用特約が使える場合には、自己負担を気にせず、弁護士に示談交渉を依頼できますので、積極的に弁護士に依頼して、適切な賠償金を獲得するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。
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