主婦でも逸失利益は請求できる?計算方法や兼業主婦の場合も解説
交通事故で後遺障害等級が認定されたが、保険会社から主婦なので逸失利益は認められないと言われた。主婦だと逸失利益はもらえないのだろうか・・・
後遺障害等級が認定されている場合には、後遺障害逸失利益を請求することができます。
そして、主婦であっても休業損害を請求できるように、後遺障害逸失利益を請求することができます。もっとも、通常の給与所得者等とは、計算方法や請求方法が異なります。
この記事では逸失利益の計算方法、主婦の逸失利益の計算方法、兼業主婦の逸失利益の計算方法、逸失利益が制限されるケースについて解説しています。
この記事を読めば、主婦の逸失利益の計算方法や請求方法が理解できるでしょう。
この記事でわかること
- 逸失利益の計算方法
- 主婦の逸失利益の計算方法
- 兼業主婦の逸失利益の計算方法
- 主婦の逸失利益が制限されるケース
- 主婦の逸失利益を認定した裁判例
目次
逸失利益の計算方法
逸失利益とは、後遺障害が残ったり被害者が死亡したことにより、将来の収入が減少したり得られなくなることに対する賠償のことです。
後遺障害逸失利益は以下の計算式で算定します。
計算式) 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
被害者が死亡した場合の死亡逸失利益は以下の計算式で算定します。
計算式) 基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
主婦でも逸失利益を請求できる
主婦であって、他人のために家事労働を行うことに財産的価値があるので、それが後遺障害によって制限されたり、死亡した場合には、逸失利益を請求することができます。
もっとも、主婦の逸失利益は、計算方法が通常の会社員とは異なります。
この章では、主婦の逸失利益の計算方法について解説しています。
基礎収入
主婦はどこからか収入を得て家事を行っているわけではありません。
したがって、基礎収入は、賃金センサスの女性学歴計全年齢の平均賃金を参考にします。
賃金センサスの女性全年齢平均平均賃金 | |
平成30年 | 382万6300円 |
平成31年、令和元年 | 388万0100円 |
令和2年 | 381万9200円 |
令和3年 | 385万9400円 |
労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺障害が残った場合に、それが将来の仕事等にどの程度影響するのかの割合を示すものとなっています。
これは、労働能力喪失率表を参考に
- 被害者の職業
- 年齢
- 性別
- 後遺障害の部位・程度
- 事故前後の稼働状況
を総合的に考慮して判断されます。
もっとも、主婦の場合には、労働能力喪失率表の労働能力喪失率通りに認定されることが多いです。
労働能力喪失期間、就労可能年数
これは、後遺障害が労働能力に影響する期間であったり、主婦として稼働できる期間のことです。
基本的には、67歳までの期間のことをいいます。
そして、逸失利益は本来毎年発生するはずの将来の収入の減少分を一括で受け取る関係で、被害者が利息分得をしていまいます。
それを調整するための係数がライプニッツ係数です。事故当時の民法の利率(現行民法では3%)をもとにライプニッツ係数は算定されます。
例えば、5年のライプニッツ係数は4.5797となります。
生活費控除率
これは死亡逸失利益の場合にだけ問題となるものです。被害者が生きていれば収入から生活費を支出していたはずなので、その生活費の支出を免れた分、請求できる逸失利益も減額される、というものです。
主婦の場合にも生きていれば生活費を支出していたはずであり、その分生活費の支出を免れているので、逸失利益で清算することとされています。
生活費控除率は下記の表によって算定されます。
主婦の逸失利益の計算例
- 後遺障害逸失利益
事故当時45歳の主婦が、令和3年に事故に遭い、後遺障害等級第11級と認定された場合の後遺障害逸失利益の計算は以下のようになります。
基礎収入 | 381万9200円 |
労働能力喪失率 | 20% |
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 | 15.9369 (労働能力喪失期間22年に対応するライプニッツ係数) |
逸失利益の金額 | 1217万3242円 |
- 死亡逸失利益
事故当時30歳の主婦が、令和2年に事故に遭い、死亡してしまった場合の死亡逸失利益の計算は以下のようになります。
基礎収入 | 388万0100円 |
1-生活費控除率 | 70% |
就労可能年数に対応するライプニッツ係数 | 22.1672 (就労可能年数37年に対応するライプニッツ係数 |
逸失利益の金額 | 6020万7667円 |
主婦の逸失利益の請求方法
主婦が逸失利益を請求する場合には、後遺障害が認定されていることと、自身が主婦として家事を行っていることを主張する必要があります。
具体的には、以下の資料を提出することになります。
- 後遺障害等級認定結果
- 世帯全員の住民票or家族構成表
- (兼業主婦なら)事故前年度の源泉徴収票
なお、加害者側に保険会社がついていない場合には、賃金センサスの平均賃金も主張する必要があります。
兼業主婦の逸失利益の計算
兼業主婦の場合にも主婦として逸失利益を請求できる余地があります。
兼業主婦の場合には、実収入と主婦の逸失利益を比べ、どちらか高い方の逸失利益だけを請求できるということになっています。
基本的には、実収入の年収と、賃金センサスの平均賃金のどちらか高い方を基礎収入として逸失利益を算定します。
兼業しているからといって、就労分と主婦分の二重取りができるわけではありません。
主婦の逸失利益の請求が制限されるケース
主婦の逸失利益については、上記のように計算されますが、一定の場合には上記の計算よりも逸失利益が制限されることがあります。
この章では、主婦の逸失利益が制限される2つのケースを解説します。
後遺障害等級14級、12級の場合
むちうち等の神経症状により、後遺障害等級12級13号や14級9号が認定されている場合には、神経症状については時間経過により症状が順化すると考えられているため、労働能力喪失期間が制限されます。
具体的には、12級の場合は10年、14級の場合には5年程度に制限されます。
高齢者の場合
高齢者の場合には、基礎収入と労働能力喪失期間が異なってきます。
高齢の家事従事者については、若年者よりも家事に慣れており、家事にかかる時間が少ないことから、基礎収入は女性の年齢別平均賃金を用いられることが多いです。
労働能力喪失期間については、67歳までの期間だと短くなるため、平均余命の2分の1と67歳までの期間を比べて、どちらか長い方が労働能力喪失期間となります。
主婦について逸失利益を認定した裁判例
この章では、主婦について逸失利益を認定した裁判例を紹介します。
専業主婦58歳の例
主婦(58歳)の頚髄不全損傷による顔面を含む左半身のしびれ等の神経症状(12級)につき、賃金センサスの女性学歴計全年齢平均賃金を基礎に、労働能力喪失期間14年間を認めた(東京地判平成19.12.20)。
兼業主夫50歳の例
自宅で翻訳業を営み、189万円余りの収入を得るとともに、同居する両親の介護等をしていた被害者(男性、症状固定時50歳)につき、賃金センサスの女性全年齢平均賃金364万1200円を基礎収入として逸失利益を認定した(名古屋地判平成30.4.18)。
専業主婦69歳の例
無職者(女性、症状固定時69歳、後遺障害等級5級)につき、長男家族と同居し、その家事を分担する等の就労の可能性があり、労働の意欲及び能力は有していたとして、賃金センサスの女性65歳以上平均賃金の70%である199万0310円を基礎収入として逸失利益を認定した(東京地判平成22.2.9)。
交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!
交通事故の被害に遭ってしまった場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。
また、後遺障害等級が認定されている場合には、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益など、請求項目も多くなります。
そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。
したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
交通事故では弁護士に示談交渉を依頼するメリットが大きい
弁護士に示談交渉を依頼すると、保険会社との交渉を弁護士にすべて任せることができるため、交渉に対する心理的ストレスから解放されます。また、慰謝料について保険会社が採用している基準と弁護士が使用する基準では金額が大きく異なり、弁護士に交渉を依頼した方が最終的に受け取れる示談金も多くなります。
よって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
法律事務所Lapinが選ばれる理由!
弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。
法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。
また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。
法律事務所Lapinでは弁護士費用特約も利用可能!
自身の保険や、ご家族の保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、それを利用することによって、基本的に自己負担なく、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することができます(弁護士費用の300万円まで保険会社が負担するため)。また、弁護士費用特約はノンフリート等級なので、翌年の保険料にも影響はありません。
法律事務所によっては、報酬基準の違いで弁護士費用特約を利用できない場合もありますが、法律事務所Lapinでは基本的に弁護士費用特約を利用してご依頼いただくことが可能です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
主婦の逸失利益の計算方法等が理解できましたでしょうか。
主婦の場合には、収入の減少がないため、逸失利益を否定されることもあります。
もっとも、主婦であっても将来の家事に影響が生じるということを適切に主張することにより逸失利益を請求することは可能です。
後遺障害等級が認定されている場合には、請求項目や金額も多くなりますので、一度は弁護士に相談するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。
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