年金受給者も逸失利益をもらえる?請求できる2つのケースや計算方法

年金

交通事故で年金を受給していた人が死亡した場合に、逸失利益を請求できるかどうか疑問ではありませんか。

年金を受給していた場合でも逸失利益を請求できる場合があります。もっとも、通常の会社員等とは計算式も生活費控除率も異なる点も多いです。

この記事では、年金について逸失利益を請求できる2つのケース、逸失利益を請求できる年金の種類、年金の生活費控除率について解説しています。

この記事でわかること

  • 年金の逸失利益の計算方法
  • 年金について逸失利益を請求できる2つのケース
  • 逸失利益を請求できる年金の種類
  • 年金の生活費控除率
  • 年金に逸失利益を認めた裁判例

年金の逸失利益の計算方法

相場

逸失利益には、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益の2種類があります。

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことにより将来の仕事に影響が生じ、収入が減少する可能性があることに対する賠償のことです。

死亡逸失利益とは、被害者が死亡したことにより、将来得られるはずだった収入等が得られないことに対する賠償のことです。

年金については、後遺障害が残ったとしても受給金額に影響が出ないので、後遺障害逸失利益は請求できません

ここで解説するのは、死亡逸失利益のみとなります。

なお、年金の死亡逸失利益は以下の計算式で算定します。

計算式) 基礎収入×(1-生活費控除率)×平均余命年数のライプニッツ係数

年金について死亡逸失利益を請求できる2つのケース

年金については死亡逸失利益を請求できますが、この章では、年金について死亡逸失利益を請求できる2つのケースについて解説します。

  1. すでに年金を受給している場合
  2. 年金の受給資格を得ていた場合

年金を受給している場合

交通事故時にすでに年金を受給していたような場合には、死亡してしまったことによって、将来の年金を受け取ることができなくなります。

この場合には、交通事故がなく生きていれば年金を確実に受け取れていたので、逸失利益を請求できます。

年金受給資格を取得していた場合

交通事故時には年金を受け取っていなかったが、年金受給資格を有していた場合でも、将来得られるはずだった年金額を基礎収入として逸失利益を請求することが可能です。

なお、若年者の場合には、今後年金が支払われるかどうか不確実なので請求することは困難で、基本的には年金受給直前の高齢者のみが対象となります。

この場合には、下記の計算式によって算定します。

計算式) 予想される年金額×(1-生活費控除率)×(平均余命年数に対応するライプニッツ係数-年金受給年齢までの年数のライプニッツ係数)-(予想保険料年額×保険料支払い年数に対応するライプニッツ)

逸失利益を請求できる年金の種類

2つの選択肢

年金と言ってもいくつか種類があり、裁判例で逸失利益該当性が認められていないものもあります。

この章では、年金について逸失利益を請求できるものとできないものについて解説します。

逸失利益を請求できるもの

逸失利益を請求できる年金としては、以下のようなものです。

  • 老齢基礎年金
  • 厚生年金
  • 退職年金
  • 障害年金
  • 個人年金

これらについては、被害者が保険料を支払ってきており、家族のための生活保障的な意味も含む年金となっていますので、逸失利益を請求することができます。

逸失利益を請求できない年金

逸失利益を請求できない年金は以下のものです。

  • 遺族年金

これについては、受給者の生活保障を目的としたものではなく、社会保障的意味をもつ年金となっていますし、被害者の意思によって受給権が消滅する場合もあり存続が確実なものということもできないので、逸失利益を請求することができません。

逸失利益を請求できる場合の生活費控除率

生活費控除率とは、被害者が生きていれば収入から生活費を支出していたはずなので、収入から被害者の生活費を控除した金額が逸失利益の金額となってきます。

この生活費の控除率が生活費控除率となります。

基本的には性別や家族構成等によって、下記の表により算定します。

生活費控除率

年金については、生活を保障することを目的として支給されており、被害者が生きていれば、年金の大部分を生活費として費消している可能性が高いとして、生活費控除率は上記の表よりも高めに認定されている例が多いです。

年金の逸失利益を請求する際の2つの注意点

年金について死亡逸失利益を請求できる場合でも注意すべき点が2つあります。

  • 仕事もしていた場合にはその分の逸失利益も請求する
  • 相続問題を解決する

仕事をしていた場合にはその分の逸失利益も請求する

年金を受給しつつ仕事も行っていた場合には、年金についての逸失利益だけでなく、仕事を行い収入を得ていた分についても死亡逸失利益を請求できます。

したがって、その場合には、年金部分と仕事部分の2種類の逸失利益を請求するようにしましょう。

なお、年金については平均余命まで、仕事部分は平均余命の2分の1と、逸失利益を請求できる期間は異なるので注意が必要です。

相続問題を解決する

交通事故によって被害者が死亡してしまった場合には、被害者の相続人が損害賠償請求を相続して、保険会社等と交渉を行うことになります。

その際には、基本的には相続人全員の代表者もしくは遺産相続を行った人が、示談等の当事者となります。

もっとも、交渉の前提となる相続について、相続人間で争いとなっている場合には、保険会社等との交渉も円滑に進みません。

したがって、交通事故の賠償金の話をする前に、相続問題を解決するようにしましょう。

年金について逸失利益を認定した裁判例

この章では、年金について逸失利益を認定した裁判例を紹介します。

3か月後に定年退職予定の大学教授の例

事故の3か月後に定年退職予定の大学教授(男性、65歳)につき、すでに受給が確定していた老齢基礎年金59万8077円及び私学共済年金130万2180円の合計190万0257円を基礎に、平均余命までの19年間、生活費控除率50%で1148万2587円の年金分逸失利益を認定した(神戸地判令和2.2.14)。

兼業主婦59歳の例

夫を扶養する兼業主婦(59歳)につき、事故の約4か月後に受給権の発生する老齢厚生年金の逸失利益性を認め、生活費控除率は就労可能な72歳までは30%、以降86歳までは60%で認めた(大阪地判平成17.4.1)。

交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!

ビジネスウーマン

交通事故で被害者が死亡してしまった場合の保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。

また、賠償金を請求する段階までに相続問題も解決しておいた方がいいです。

したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。

法律事務所Lapinが選ばれる理由!

弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。

法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。

また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。

法律事務所Lapinでは弁護士費用特約も利用可能!

自身の保険や、ご家族の保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、それを利用することによって、基本的に自己負担なく、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することができます(弁護士費用の300万円まで保険会社が負担するため)。また、弁護士費用特約はノンフリート等級なので、翌年の保険料にも影響はありません

法律事務所によっては、報酬基準の違いで弁護士費用特約を利用できない場合もありますが、法律事務所Lapinでは基本的に弁護士費用特約を利用してご依頼いただくことが可能です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

年金について逸失利益が請求できる場合が理解できましたでしょうか。

まとめると、被害者が死亡した場合に、

  • 年金を受給していた場合
  • 年金を受給できる要件を満たしていた場合

には、年金についての逸失利益を請求することができます。

そして請求できる年金の種類は以下のようなものです。

  • 老齢基礎年金
  • 厚生年金
  • 退職年金
  • 障害年金
  • 個人年金

なお、年金の逸失利益の計算や請求には専門的な知識や保険会社と交渉する必要も出てきますので、弁護士に相談するようにしましょう。

投稿者プロフィール

弁護士
弁護士 河井浩志
法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。