主婦でも休業損害をもらえる?主婦休損の計算方法や請求方法を解説
交通事故被害にあい、普段していた家事ができなくなってしまったが、主婦でも休業損害をもらえるのか疑問ではありませんか。
主婦であっても、他人に家事労働を提供するという点で財産的価値があるため、休業損害を請求することができます。もっとも、主婦は誰かから賃金をもらっているわけではないですし、休業を証明してくれる人もいないので、日額や休業日数、パートや会社員としても勤務している兼業主婦の方もいるので、主婦の休業損害の請求は注意が必要です。
この記事では、
- 主婦の休業損害の計算方法
- 兼業主婦の休業損害の計算方法
- 主婦の休業損害の請求方法
- 家事代行を利用した場合の休業損害
について解説しています。
この記事を読めば、主婦の休業損害の正しい計算方法が理解できるでしょう。
目次
主婦でも休業損害を請求できる
休業損害とは、交通事故によるけがのために仕事を休み、賃金が支払われないことに対する賠償のことです。
そして、主婦であっても、他人のために家事労働を行っているという点に財産的価値があるとされ、事故のために家事ができなかった場合には、休業損害を請求することができます。
主婦の休業損害の計算方法
休業損害は、以下の計算式で計算されます。
日額×休業日数
もっとも、主婦の場合には、どこかから給料をもらっているわけではないですし、家事ができなかった日を誰かが証明してくれるわけでもありませんので、日額や休業日数が争点となりやすいです。
日額
日額については、自賠責基準では日額6100円で算定されます。
弁護士基準では、日額は賃金センサスの学歴計・年齢計の女性平均賃金を365で割って計算します。
賃金センサスの女性全年齢平均平均賃金 | 日額 | |
平成30年 | 382万6300円 | 1万0483円 |
平成31年、令和元年 | 388万0100円 | 1万0630円 |
令和2年 | 381万9200円 | 1万0463円 |
令和3年 | 385万9400円 | 1万0574円 |
したがって、自賠責基準と弁護士基準では、日額に約4000円程度の差が出てきます。
休業日数
休業日数については、誰かが証明してくれるわけではありませんが、通常は通院している間は家事ができなかったと評価できるので、通院日を休業日数として計算することもあります。自賠責基準ではこの方法で休業日数を計算することになります。
もっとも、通院している日であっても、1日中家事ができないわけではないですし、逆に通院していない日にも、怪我の痛み等によって家事ができないこともあります。そのような考えから、家事への支障割合を算定して、逓減方式で休業日数等を計算する方法もあります。
これは、例えば、事故から30日は家事への影響が70%、その後30日は影響が40%などと仮定して
日額×70%×30日+日額×40%×30日
として計算する方法になります。
なお、この場合には、入院日であったり寝たきりの日については、家事への影響が100%として計算されることになります。
兼業主婦の休業損害の計算方法
会社員やパートとして働きながら家で家事もしている兼業主婦についても、交通事故の怪我のために家事ができなかった場合には主婦休損を請求することができます。
もっとも、兼業主婦の場合には、仕事を休んだ分の休業損害と主婦の休業損害を比べて、どちらか高い方しか休業損害として請求できないことになっています。
また、主婦の休業損害の方が金額が高いとして主婦休損を請求したとしても、会社員やパートでは休業していない場合には、家事にもそこまで影響が出なかったのではないかと考えられ、専業主婦と比べて主婦休損の金額が低くなる可能性もあります。
なお、兼業主婦の休業損害については、以下の記事で解説しています。
主婦の休業損害の請求方法
主婦の休業損害については、会社員のように休業損害証明書を誰かが記載してくれるわけではありません。
主婦の場合には、自身が家事労働を行っていたこと=主婦であることを主張立証する必要があるので、住民票であったり家族構成表を提出することによって、自身が主婦であることを証明していくことになります。
なお、主婦の休業損害については、もらえなくても生活に影響が出ないと考えられるので、基本的には治療が終了してから慰謝料等と一緒に支払われることになります。
男性の主婦(主夫)の場合
現在においては、一般的に女性が家事をするものと考えられているので、男性の主夫の場合には、住民票や家族構成表を提出するだけでは、主夫として家事を行っていたと認めてもらえません。
その場合には、同居家族の源泉徴収票を提出したり、自身の課税証明書を提出したりすることによって、同居している自身以外の人には家事ができなかったこと、自身は家事をすることができたこと、などを主張立証して男性の主婦休損を請求していく必要があります。
家事代行等の代替労働を利用した場合
この場合には、家事代行等にかかった実費を休業損害として請求することができます。なお、この場合には、家事ができなかったことに対する休業損害を請求することはできません。家事ができない分代替労働で賄われており、その分を実費で請求することにより、なんら損害が生じていないといえるからです。
この場合には、家事代行等の利用明細や領収書を証拠として提出するようにしましょう。
主婦の休業損害を請求するポイント
この章では、主婦の休業損害を適切な金額獲得するための2つのポイントについて解説します。
家事についてできなかったことをメモしておく
家事といっても、家族構成や居住地域、自宅の間取り等によってやらなければならないことは様々です。そして、主婦の休業損害を請求する際には、怪我によってどのような家事にどの程度の影響があったのかを主張していく必要があります。
したがって、事故前に行っていた家事をリストアップし、事故によってできなくなった、制限された家事について、どのような影響が生じているのか等をメモするようにしておきましょう。
弁護士に相談する
主婦の休業損害については、計算方法が定まっておらず、また自賠責基準との差額も大きくなります。
ただ、個人で保険会社と交渉したとしても、適切な額の主婦休損を獲得することは困難です。
したがって、主婦の休業損害については弁護士に示談交渉を依頼するようにしましょう。
主婦の休業損害を認定した裁判例
この章では、主婦の休業損害を認定した裁判例を紹介します。
28歳の専業主婦の事例
妊娠中の専業主婦(症状固定時28歳、左足関節の可動域制限の後遺障害で後遺障害等級第12級7号)につき、賃金センサスの女性平均賃金を基礎に、出産のため入院した8日間を除き、受傷日から出産のための入院の前日まで242日間は100%、退院の翌日から90日間は60%、その後症状固定まで50日間は30%の逓減方式で主婦の休業損害を認めた(東京地判平成15.12.8)。
80歳の専業主婦の事例
専業主婦(80歳、後遺障害等級第14級)につき、無職の夫と2人暮らしで家事の全部を負担していたことを踏まえ、賃金センサスの70歳以上女性の平均賃金の90%を基礎に、入院期間の31日につき100%、通院期間の292日間につき20%で合計66万円余りの休業損害を認めた(東京地判令和1.7.12)。
48歳の専業主婦の事例
専業主婦(48歳、後遺障害等級併合7級)につき、賃金センサスの女性学歴計の45歳から49歳までの平均賃金を基礎に、事故当日から症状固定まで556日間につき、完全な休業を要したとして休業損害を認めた(大阪地判平成13.1.25)。
交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!
交通事故の被害に遭ってしまった場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。
そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。また、主婦の休業損害については、金額が裁判例においても定まっていないので、保険会社との交渉では争点となりやすいです。
したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
交通事故では弁護士に示談交渉を依頼するメリットが大きい
弁護士に示談交渉を依頼すると、保険会社との交渉を弁護士にすべて任せることができるため、交渉に対する心理的ストレスから解放されます。また、慰謝料について保険会社が採用している基準と弁護士が使用する基準では金額が大きく異なり、弁護士に交渉を依頼した方が最終的に受け取れる示談金も多くなります。
よって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
法律事務所Lapinが選ばれる理由!
弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。
法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。
また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。
法律事務所Lapinでは弁護士費用特約も利用可能!
自身の保険や、ご家族の保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、それを利用することによって、基本的に自己負担なく、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することができます(弁護士費用の300万円まで保険会社が負担するため)。また、弁護士費用特約はノンフリート等級なので、翌年の保険料にも影響はありません。
法律事務所によっては、報酬基準の違いで弁護士費用特約を利用できない場合もありますが、法律事務所Lapinでは基本的に弁護士費用特約を利用してご依頼いただくことが可能です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
主婦の休業損害について理解できましたでしょうか。
主婦であっても休業損害を請求でき、日額は賃金センサスの平均賃金を基礎に、休業日数は通院日や逓減方式によって算定されます。
なお、主婦の休業損害については裁判例においても金額について定まっているわけではないために保険会社との交渉では争点となりやすいです。したがって、主婦の休業損害については一度は弁護士に相談するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。
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