無職でも逸失利益はもらえる?請求できる4つのケースと請求方法を解説

無職

交通事故で後遺障害等級が認定されたけれども、無職なので後遺障害逸失利益が請求できるかどうか疑問ではありませんか。

後遺障害逸失利益を計算する際の基礎収入は原則として事故前年度の年収をもとに計算していくので、無職の場合には原則として逸失利益を請求できません
もっとも、無職であっても逸失利益を請求できるケースは4つあります。

この記事では、無職でも逸失利益を請求できる4つのケース、逸失利益の計算方法、逸失利益の請求方法、無職で逸失利益を認定した裁判例等を解説します。

この記事を読めば、無職でも逸失利益を請求できる場合が理解できるでしょう。

この記事でわかること

  • 無職でも逸失利益を請求できる4つのケース
  • 逸失利益の計算方法
  • 逸失利益の請求方法
  • 無職で逸失利益を認定した裁判例

逸失利益とは

悩む

逸失利益には、後遺障害逸失利益死亡逸失利益の2種類があります。

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残存し、そのために将来の就労に影響があり収入が減少する可能性があることに対する賠償のことです。

死亡逸失利益とは、被害者が死亡したことにより、将来の収入が得られないことに対する賠償のことです。

したがって、逸失利益を請求するためには、原則として将来的にも仕事をして収入を得る可能性があることを主張する必要があります。

なので、無職の場合には、事故当時仕事をしていなかったので、原則として逸失利益を請求できないことになります。

なお、自賠責保険の場合には、原則として無職者であっても平均給与額の年相当額を基礎として、逸失利益を請求できます。

無職の場合でも逸失利益を請求できる4つのケース

ガッツポーズする女性

無職の場合には、後遺症が残ったり死亡してしまっても、将来の収入の減少という概念がないために、原則として逸失利益を請求することはできません。

もっとも、無職でも4つのケースで逸失利益を請求できる場合があります。

この章では、無職でも逸失利益を請求できる4つのケースについて解説します。

  1. 就労の意欲等がある場合
  2. 主婦
  3. 学生
  4. 年金受給している高齢者

就労の意欲等がある場合

無職であっても、ずっと無職なのではなく、前職を退職したばかりであったり、就職活動をしていたり内定をもらっていたりなど、就労する可能性があった場合には、将来の収入の減少の可能性があるので、逸失利益を請求できます。

以下の事情を主張立証することによって、逸失利益を請求できる場合があります。

  • 就労の意欲
  • 就労の能力
  • 就労の蓋然性

具体的には、過去に就職をしていた事実や、無職になった期間就職活動を行っていた事実などを主張します。

また、企業から内定をもらっているようなケースであれば、これらを容易に主張立証することができます。

この場合の基礎収入は、前職の年収や、内定条件の年収賃金センサスの平均収入を用いたりします。

主婦の場合

無職であっても家で家事を行っている主婦であれば、主婦の休業損害が請求できます。

そして、主婦が事故に遭い、後遺障害が残った場合には、将来の主婦業に影響が生じるとして、逸失利益も請求できます。

この場合の基礎収入は、休業損害と同様、事故前年度の女性学歴計全年齢の賃金センサスの女性平均賃金を用います。

なお。高齢の主婦の場合には、年齢別の平均賃金を用いたりします。

学生の場合

無職であっても学生の場合には、逸失利益を請求できます。

この場合には、まだ働いていないので事故前年度の年収を用いることはできませんので、賃金センサスの平均賃金を基礎収入として用います。

なお、大学進学や大学卒業の蓋然性が高い場合には、学歴別の平均賃金を用いたりします。

また、学生の場合には働き始める=労働能力に影響が出るまでにも期間が空きますので、労働能力喪失期間の始期は卒業する歳からとなります。

具体的には以下の計算式で算定します。

計算式) 基礎収入×労働能力喪失率×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数-就労開始年齢までの期間に対応するライプニッツ係数)

なお、学生の逸失利益は金額も大きくなりやすいですし、争点にもなりやすいので、弁護士に一度は相談した方がいいでしょう。

年金を受給している高齢者の場合

年金を受給している高齢者の無職の場合には、後遺障害が残っても受給できる年金の金額が減少するわけではないので、後遺障害逸失利益は請求できません。

もっとも、事故によって死亡してしまった場合には、将来受け取るはずだった年金を受け取れなくなる関係で、逸失利益を請求できます。

具体的には、以下の計算式で算定します。

計算式) 基礎収入×(1-生活費控除率)×平均余命年数のライプニッツ係数

年金については、逸失利益を請求できる年金の種類が決まっています。

逸失利益として請求できるもの

  • 老齢年金
  • 障害年金

逸失利益として請求できないもの

  • 遺族年金

また、年金の場合には、生活を保障することを目的とされており、被害者が生きていれば年金の大部分を生活費として費消している可能性が高いとして、生活費控除率は通常よりも高く認定される傾向にあります。

逸失利益の計算方法

お金

無職であっても逸失利益を請求できる場合があることは理解できたかと思いますが、逸失利益はどうやって算定するのでしょうか。

逸失利益は基本的には、以下の計算式で算定します。

計算式) 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

この章では、逸失利益の具体的な算定方法について解説します。

基礎収入

基礎収入は、原則として事故前年度の年収を用います。

なお、学生や若年労働者、主婦の場合には、賃金センサスの平均賃金を用いたりします。

また、就職意欲のある無職の場合には、前職の年収や、内定先の年収、賃金センサスの平均賃金を用いたりします。

労働能力喪失率

これは、後遺障害が将来の仕事に与える影響のことです。

この影響割合の分だけ将来の年収が下がると考えられ、その分の逸失利益を請求できます。

労働能力喪失率は、

  • 被害者の職業
  • 年齢
  • 性別
  • 後遺症の部位、程度
  • 事故前後の稼働状況

などを総合的に判断して認定されますが、基本的には後遺障害の認定された等級に応じて、以下の表を参考にして決定されます。

労働能力喪失率

労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、後遺障害が労働能力に影響する期間のことです。

実務では、症状固定時から67歳までの期間を労働能力喪失期間として計算します。

もっとも、むちうち症等の神経症状による後遺障害等級(12級13号、14級9号)の場合には、時間経過により症状に順化すると考えられ、労働能力に影響がなくなるとされていることから、労働能力喪失期間は12級の場合には10年14級の場合には5年程度に制限されるのが一般的です。

なお、逸失利益とは本来、毎年減少する収入を補填してもらうものなのに、事前に一括で受け取る関係で、被害者が利息分得をしてしまいます。

現行法の利息だと、年3%の利息が生じるとされます。

その得を調整するのが、ライプニッツ係数です。

したがって、労働能力喪失期間の数字をそのまま掛けるのではなく、ライプニッツ係数によって利息分調整された数字を掛けることによって、逸失利益は算定されます。

無職でも逸失利益が請求できる場合の請求方法

無職でも逸失利益が請求できる場合には、自身が請求できる者だと主張立証する必要があります。

具体的には以下の資料を提出することになります。

就労意欲のある者

  • 前職の源泉徴収票
  • 内定通知書
  • 就職活動をしていたことを示す資料

主婦

  • 家族構成表
  • 世帯全員の住民票
  • (兼業主婦の場合)事故前年度の源泉徴収票

学生

  • 学生証
  • (高校生等が大学卒業を前提に請求する場合)学校の成績表、模試の受験結果等

年金を受給している高齢者

  • 年金額を示す資料

なお、これらの資料を提出した上で、自身が逸失利益を請求できる無職であることや、逸失利益の金額を主張してく必要があります。

無職者について逸失利益を認定した裁判例

この章では、無職者について逸失利益を認定した裁判例を紹介します。

無職者28歳について逸失利益を認定した裁判例

無職者(男性、症状固定時28歳、後遺障害等級3級)につき、比較的若年で、介護士になる希望をもち専門学校への進学が決まっていたこと、事故前に正社員として勤務していた勤務先を退職後も複数のアルバイトに従事し月額10万円程度の収入を得ていたことから、労働能力及び労働意欲があり、専門学校卒業後に就労先を得る蓋然性が高いとして、賃金センサスの男性学歴計全年齢平均賃金を逸失利益算定の基礎収入とした(福岡地判平成18.9.28)。

就活中の男性46歳について逸失利益を認定した裁判例

就活中・家業手伝い(男性、症状固定時46歳、後遺障害等級併合12級)につき、就職を予定していた会社の給与は当初月額15万円であるが、昇給や条件のよい就職先への転職もありうること、事故前年の給与額は420万円程度であることから、その7割の294万円を基礎収入とした(さいたま地判平成30.12.28)。

資格取得中の大学生26歳につき逸失利益を認定した裁判例

卒業後税理士を目指して勉強中の大学生(男性、症状固定時26歳、後遺障害等級10級)につき、大学を卒業し、症状固定時26歳と若年であったことから、賃金センサスの男性大卒全年齢平均賃金646万0200円を基礎に、41年間27%の労働能力喪失を認めた(東京地判平成29.12.20)。

無職でもしっかりと逸失利益を獲得するには弁護士に依頼しよう

ビジネスウーマン

交通事故の被害に遭ってしまった場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。

そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。

また、後遺障害が残っているケースでは、後遺障害慰謝料の請求や後遺障害逸失利益の請求など、請求項目も多くなります。

したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。

法律事務所Lapinが選ばれる理由!

弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。

法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。

また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。

法律事務所Lapinでは弁護士費用特約も利用可能!

自身の保険や、ご家族の保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、それを利用することによって、基本的に自己負担なく、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することができます(弁護士費用の300万円まで保険会社が負担するため)。また、弁護士費用特約はノンフリート等級なので、翌年の保険料にも影響はありません

法律事務所によっては、報酬基準の違いで弁護士費用特約を利用できない場合もありますが、法律事務所Lapinでは基本的に弁護士費用特約を利用してご依頼いただくことが可能です。

まとめ

いかがだったでしょうか。無職でも逸失利益が請求できる場合について理解できましたでしょうか。

まとめると、無職でも逸失利益が請求できる場合は

  • 就労の意欲等がある場合
  • 主婦
  • 学生
  • 年金を受給している高齢者

となります。

なお、無職の場合には、逸失利益の支払いについて保険会社と争いになることが多いですし、後遺障害等級が認定されている場合には、慰謝料も含めて、弁護士に依頼すると賠償金が数倍になるケースもありますので、一度は弁護士に相談した方がいいでしょう。

投稿者プロフィール

弁護士
弁護士 河井浩志
法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。