公務員でも休業損害を請求できる?請求できる3つの場合や計算方法を解説
交通事故で仕事を休んでいるが、公務員だと休業損害がもらえないと聞いたが本当なのだろうか。公務員でも休業損害がもらえる場合があるのだろうか・・・
交通事故で仕事を休んでいる場合には、休業損害を請求できます。
もっとも、公務員の場合には通常の会社員とは地位の保障が異なり、仕事を休んでも給料を支払ってもらえるケースも多いので、休業損害が請求できるケースは限られています。
また、後遺障害が残った場合の後遺障害逸失利益についても保険会社と争いになることが多いです。
この記事では、公務員でも休業損害を請求できるケースや、休業損害の計算方法、公務員の後遺障害逸失利益の請求が難しい理由等について解説します。
この記事でわかること
- 公務員が休業損害を請求できない理由
- 公務員でも休業損害を請求できる3つのケース
- 公務員の休業損害の計算方法
- 賞与の減額や昇給できなかったことの賠償
- 公務員の後遺障害逸失利益
目次
公務員は原則休業損害を請求できない
休業損害とは、仕事を休んだために給料を得られないことに対する賠償のことです。
そして、公務員の場合には、病気で仕事を休む場合には、病気休暇制度を利用することができます。
この病気休暇制度を利用すると、90日間は仕事を休んでも給料を満額支払ってもらえます。
この場合には、公務員には減収という損害が生じていませんので、原則として休業損害を請求することはできません。
公務員でも休業損害を請求できる3つの場合
公務員には病気休暇制度があるとしても、それで休業損害が一切請求できなくなるわけではありません。
この章では、公務員でも休業損害を請求できる3つの場合について解説します。
- 付加給の請求
- 有給休暇
- 休業日数が90日を超える場合
付加給
付加給とは、手当や残業代などの、基本給に付加して支払われる賃金のことです。
病気休暇制度を利用した場合には給料や一部の手当は満額支払われますが、通勤手当や管理職手当、残業代などは支給されません。
それによって、事故前の給料よりも支給金額が減ってしまうという不利益が生じます。
その場合には、通常なら手当が支給されていたこと、出勤していれば残業を行い残業代が支給されていたことなどを主張立証することによって、もらえなかった手当や残業代を休業損害として請求することができます。
有給休暇を利用した場合
公務員が病気休暇制度を利用した場合には、減収がないので休業損害として請求することはできません。
もっとも、同じく休暇であるけれども賃金が支払われる有給休暇を使用した場合には、通常の会社員のように休業損害を請求することができます。
この場合には、勤務先に休業損害証明書を作成してもらい、休業損害を請求していくことになります。
なお、有給休暇の休業損害については、以下の記事で解説しています。
休業日数が90日を超えた場合
公務員が病気休暇制度を利用している場合には休業損害を請求できませんが、これは90日間しか利用することができません。
したがって、怪我が重く、休業が90日を超えてくる場合には、休業損害を請求することができます。
もっとも、病気休暇制度を利用し、休業が90日を超える場合には、「病気休職」に移行するのが一般的です。
休職期間は、最長3年となっていますが、休職1年目は給与の80%が支給されます。
また、休職期間が2年目に入ると病気休職制度からは給料は支払われませんが、その代わりに傷病手当金を受給することができ、給与の約3分の2の傷病手当金を1年半受給することができます。
休業日数 | もらえるもの |
90日まで | 病気休暇(給料の満額) |
90日以上1年未満 | 病気休職(給料の80%) |
1年以上2年半未満 | 傷病手当金(給料の3分の2) |
したがって、休業が90日を超える場合には給料の満額が支給されないため休業損害を請求できますが、上記手当等を差し引いた金額が請求金額となります。
公務員の休業損害の計算方法
公務員の休業損害は以下の計算式によって算定します。
計算式) (事故前3か月の給料÷90日)×休業日数
日額は、事故前3か月の給料の合計金額を90で割って算出します。事故前3か月の給料には付加給も含み、税引き前の給料を参照します。
休業日数は、有給休暇を取得した日や、病気休暇制度(90日)後の休業日となります。
なお、日額や休業日数は、勤務先に休業損害証明書に記載してもらって証明しましょう。
なお、病気休職制度や傷病手当金などによって賃金の一部の支払いを受けている場合には、それを控除した金額が休業損害として請求できる金額となります。
賞与の減額や昇給できなかったことも休業損害の対象になる
上記は、通常の休業の話ですが、休業することによって賞与が支給されなかったり、翌年の昇給に影響が生じることがあります。
このような場合にも、それに対する休業損害を請求する余地があります。
この章では、賞与が減額された場合の賠償や、昇給ができなかったことに対する賠償について解説しています。
賞与の減額
賞与は、必ず決まった金額が支給されるものではありませんが、事故による休業のために出勤日数が減り、それによって賞与が減額された場合には、賞与の減額分を休業損害として請求できます。
なお、公務員の場合には、期末手当と勤勉手当の合算が賞与の金額となり、病気休職制度を利用している場合には、期末手当については減額されず、勤勉手当分のみ減額されるので請求の対象となります。
この場合には、勤務先に「賞与減額証明書」を作成してもらう必要があります。
昇給ができなかった
事故による休業が多い場合には、翌年の昇給に影響してしまうこともあります。
この場合には、
- 本来なら昇給できたのに昇給ができなかったこと
- 昇給できなかったことが事故による休業が原因であること
を勤務先に証明してもらえれば、昇給できなかった分を休業損害として請求できる余地があります。
公務員は後遺障害逸失利益も争点になる
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ってしまい、それによって労働能力が減少することにより将来の給料が減額することに対する賠償です。
これは、後遺障害等級が認定されたことを前提に、後遺障害の程度や職業への影響を加味して、判断されます。
もっとも、公務員の場合には法律によって地位が保障されており、後遺障害が残ったとしても、将来の給料が減額される可能性は低いと言えます。
したがって、保険会社は公務員については、後遺障害逸失利益の支払いを争ってくるケースが多いです。
ただし、公務員で後遺障害があっても減給していないとしても、減給していないことが被害者や周りの特別の努力によるものである場合や、定年退職後の再就職に影響がある場合などは、後遺障害逸失利益を請求できる余地があります。
交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!
交通事故の被害に遭ってしまった場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。
したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
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なお、弁護士費用特約に加入されていない方も、弁護士報酬は基本的に成功報酬制なので、今お金がなくても安心してご依頼いただけます。
まとめ
いかがでしょうか。公務員の休業損害について理解できましたでしょうか。
公務員の休業損害については、通常の会社員とは異なり、雇用契約の内容であったり給料の決まり方、病気休暇制度など、特殊な点が多いです。
また、保険会社も公務員の休業損害についてはすんなりと支払ってくれない傾向にあります。
したがって、公務員の休業損害について請求を希望する場合には、一度弁護士に相談してみましょう。
投稿者プロフィール
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法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。
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