休業損害は兼業主婦でも請求できる?適切に受け取る3つの方法を徹底解説
交通事故の被害にあい、会社員としては出勤を続けているが、家の家事が満足にできていない。このような場合に、主婦としての休業損害が請求できるか疑問ではありませんか。
実は、兼業主婦でも主婦としての休業損害を請求することはできます。もっとも、専業主婦と違い、請求できるケースは限定されていますし、フルタイムの会社員としても休業している場合には、計算方法も変わってきます。
特に、保険会社は週30時間以上働いている会社員の場合には、主婦としての休業損害を認めない傾向にあります。
この記事では、兼業主婦の休業損害の計算方法や、適切な休業損害を受け取る3つの方法、減収がない場合の休業損害等について解説しています。
この記事でわかること
- 兼業主婦の休業損害とは
- 兼業主婦の休業損害の計算方法
- 兼業主婦として適切な休業損害を受け取る3つの方法
- 減収がない正社員の場合
- 兼業主婦の休業損害を認定した裁判例
目次
兼業主婦の休業損害とは
交通事故の怪我の影響や通院のために、家の家事ができなかったり、支障が生じることがあるかと思います。
主婦であっても、他人の家事を行っていることに財産的価値があるとみなされるため、家事ができなかった場合には、休業損害を請求することができます。
そして、会社員やパートとして働きながら家の家事も行っている兼業主婦についても、家事ができなかったことに対する休業損害を請求する余地があります。
正社員やフルタイム労働者でも主婦の休業損害を請求できる
兼業主婦の方が主婦としての休業損害を請求しようとすると、保険会社から「週30時間以上働いている場合には主婦とみなされないので、休業損害は支払えない」と言われることもあります。
確かに、自賠責保険においては、週30時間以上働いている主婦については主婦としての休業損害を認めない傾向にあります。
もっとも、裁判においては、週30時間以上働いている正社員やフルタイム労働者であっても休業損害を認めている例もありますので、正社員やフルタイム労働者であっても主婦としての休業損害を請求する余地はあります。
兼業主婦の休業損害の計算方法
兼業主婦とは、会社員ないしパートとして勤務しつつ家でも家事をしている人のことをいいます。
そして、兼業主婦の場合には
- 会社員・パート等の休業損害額
- 主婦の休業損害額
を比べて、金額の高い方のみを休業損害として請求できることになっています。
なお、この場合でも、会社員等の年収が賃金センサスの女性平均賃金を上回る場合には、専業主婦と同じような家事ができていないとして、主婦の休業損害がそもそも請求できないとされることもあります。
会社員、パートの休業損害の計算方法
会社員やパートの休業損害の計算方法は、自賠責基準と弁護士基準で異なります。
自賠責基準
自賠責基準とは、車等の所有者が加入を強制されている強制保険である自賠責保険が採用している基準のことです。
自賠責基準の休業損害の計算式は以下のとおりです。
計算式) 日額×休業日数
なお、日額については、6100円とされていますが(事故が令和2年4月1日以降の場合。それ以前の事故は日額5700円)、立証資料等により日額が6100円を超えることが明らかな場合には、1万9000円を上限として、その実額が日額となります。
弁護士基準
弁護士基準の休業損害の計算方法は、以下の通りです。
計算式) 事故前3か月間の給料÷90×休業日数
事故前3か月間の給料や休業日数は、会社に休業損害証明書を作成してもらって証明します。
なお、この休業日数には有給休暇を使用した日も含みます。
例えば、事故前3か月間の給料が60万円、休業日数が20日の場合には
60万円÷90×20日=13万3333円
が休業損害の金額となります。
主婦の休業損害の計算方法
主婦の休業損害についても、自賠責基準と弁護士基準の2種類の計算方法があります。
自賠責基準
自賠責基準の場合には、基本的には週30時間未満しか働いていない兼業主婦のみ、主婦の休業損害が認められます。
金額は以下の計算式によって算定します。
計算式) 6100円×通院日数
日額は、自賠責基準では6100円(事故が令和2年4月1日以降の場合。それまでの事故なら日額5700円)とされており、休業日数は通院日とされています。
弁護士基準
弁護士基準の主婦の休業損害を算定するための日額は、事故前年度の賃金センサスの女性全年齢計学歴計の平均賃金を365で割った金額となります。
賃金センサスの女性平均賃金 | 日額 | |
令和2年度 | 381万9200円 | 1万0463円 |
令和元年度 | 388万0100円 | 1万0630円 |
平成30年度 | 382万6300円 | 1万0483円 |
平成29年度 | 377万8200円 | 1万0351円 |
平成28年度 | 376万2300円 | 1万0307円 |
そして、休業日数は通院日には家事ができなかったものとして、通院日を休業日数として算定したりします。
他には、実際には通院していても家事の一部を行うことは可能ですし、逆に通院していない日にも怪我の影響により家事に支障が生じることがあるので、怪我の程度から家事への影響割合を仮定して、逓減方式で算定することもあります。
計算例)通院期間60日。うち初めの30日間の家事への支障割合が70%、残りの30日間が40%と仮定した場合
(日額×30日×70%)+(日額×30日×40%)
そして、上記の会社員・パート等の休業損害と、上記の主婦の休業損害を比べて、金額が大きくなる方の休業損害のみ請求することができます。
兼業主婦として適切な主婦の休業損害を受け取る3つの方法
兼業主婦については、保険会社が主婦としての休業損害を出し渋ることから、主婦としての休業損害を請求するために被害者の方でも対策を練る必要があります。
この章では、兼業主婦が主婦としての休業損害を受け取るための3つの方法について解説します。
- しっかりと通院する
- 家事への支障を記録に残しておく
- 弁護士に示談交渉を依頼する
しっかりと通院する
主婦の休業損害を請求するためには、怪我をしていたことや、怪我のための通院に時間を要したことなどから、家事に支障が生じていたことを主張していくことになります。
そして、通院をおろそかにしていると、怪我の程度が軽かったのではと疑われたり、通院に時間を要していないので、家事にそこまで支障がなかったのではと疑われてしまいます。
また、慰謝料を請求する際にも、通院の期間や回数は重要になってきますので、医師と相談の上、しっかりと病院に通院するようにしましょう。
家事への支障を記録しておく
主婦としての休業損害を請求する際には、怪我の程度や通院の頻度等だけではなく、具体的にどのような家事にどういった影響があったのかを主張立証していくことが肝心となります。
例えば、
- 長時間立ったり前傾姿勢を取ることが困難で洗い物も大変だったので、スーパーマーケットで総菜を買ったり、デリバリーを利用することが増えた
- 洗濯物を干すのが大変だったので、選択をする回数が減った
- 自分で家事ができなかったので、配偶者や子供に○○の家事を手伝ってもらった
などです。
そして、これらについて具体的に主張立証していくためにも、日々の家事への影響について、適宜メモ等によって記録を残しておくようにしましょう。
弁護士に示談交渉を依頼する
しっかりと通院し、家事への支障について主張したけれども、保険会社が主婦としての休業損害を認めてくれないケースもあります。
その場合には、被害者本人で交渉しても埒が明かないため、弁護士に示談交渉を依頼することも検討しましょう。
弁護士に示談交渉を依頼すると、交渉の専門家である弁護士による交渉によって、主婦としての休業損害を認めてもらえたり、慰謝料も弁護士基準ベースの金額に増額できることが多いです。
特に、自身やご家族の保険に「弁護士費用特約」が付帯してる場合には、基本的には弁護士費用の自己負担なく弁護士に示談交渉を依頼することができます。
減収がない正社員の兼業主婦でも主婦休損を請求できる場合
会社員・パート等については休業しなかったので減収がない場合でも、家事労働に影響が出ていることもあります。
よって、この場合には、主婦の休業損害の方が金額が大きくなるので、主婦としての休業損害を請求することができます。
したがって、仕事を休まなかったとしても、主婦としての休業損害はしっかりと請求するようにしましょう。
もっとも、仕事を休業していないのであれば、怪我の程度が大きくなく、家事への影響もそこまで大きくなかったと評価され、通常の主婦の休業損害よりも金額が少なくなってしまうことはあります。
兼業主婦の休業損害を認定した裁判例
この章では、兼業主婦の休業損害を認定した裁判例を紹介します。
パート勤務の兼業主婦の事例
パート勤務する兼業主婦(53歳)につき、賃金センサスの女性学歴計50歳から54歳までの平均賃金を基礎に、入院期間97日間は100%、その後症状固定までの288日間は70%の逓減方式で、主婦としての休業損害を認めた事例(名古屋地判平成11.4.28)。
減収がない兼業主婦の事例
病院教授秘書として稼働していた兼業主婦(46歳)につき、有職部分については、代替する者がいなかったため事故翌日1日有休をとっただけで無理をして出勤し減収がなかったが、仕事の効率の低下を無報酬での残業や休日出勤により補っていたことから、賃金センサスの女性学歴計全年齢平均賃金を基礎に、事故日から52日間は40%、それ以後症状固定までの360日間は20%、計88万円余を休業損害として認めた事例(福岡高判平成28.1.28)。
交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!
交通事故の被害に遭ってしまった場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。
そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。
したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
交通事故では弁護士に示談交渉を依頼するメリットが大きい
弁護士に示談交渉を依頼すると、保険会社との交渉を弁護士にすべて任せることができるため、交渉に対する心理的ストレスから解放されます。また、慰謝料について保険会社が採用している基準と弁護士が使用する基準では金額が大きく異なり、弁護士に交渉を依頼した方が最終的に受け取れる示談金も多くなります。
よって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
法律事務所Lapinが選ばれる理由!
弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。
法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。
また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。
法律事務所Lapinでは弁護士費用特約も利用可能!
自身の保険や、ご家族の保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、それを利用することによって、基本的に自己負担なく、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することができます(弁護士費用の300万円まで保険会社が負担するため)。また、弁護士費用特約はノンフリート等級なので、翌年の保険料にも影響はありません。
法律事務所によっては、報酬基準の違いで弁護士費用特約を利用できない場合もありますが、法律事務所Lapinでは基本的に弁護士費用特約を利用してご依頼いただくことが可能です。
まとめ
いかがでしょうか。兼業主婦の休業損害の内容が理解できましたでしょうか。
兼業主婦の休業損害については、会社員やパートとしての休業損害と主婦としての休業損害の高い方の金額のみ請求できます。
もっとも、保険会社が主婦としての休業損害を認めることは少ない傾向にあり、認めるとしても金額は弁護士基準に比べると低くなっていることが多いです。
それについて自身で保険会社と交渉するのが難しい場合には、一度は弁護士に相談するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。
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