逸失利益の期間とは?14級の場合や、学生、幼児、高齢者の場合も解説
交通事故で後遺障害が認定されたが、逸失利益の期間がどうなるのか疑問ではありませんか。
逸失利益の期間とは労働能力喪失期間のことですが、ある程度基準が決まっています。
もっとも、症状の部位や程度、学生や高齢者の場合には通常通りの計算方法ではないので注意が必要です。
この記事では、後遺障害の逸失利益とは、逸失利益を請求できる期間、逸失利益を適切な期間認定してもらう2つの方法について解説しています。
この記事でわかること
- 後遺障害の逸失利益とは
- 逸失利益を請求できる期間
- 逸失利益を適切な期間認定してもらう2つの方法
目次
逸失利益とは
後遺障害逸失利益とは、後遺障害によって将来の仕事が制限され、将来の収入が下がることに対する賠償のことです。
以下の計算式によって計算します。
計算式) 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
死亡逸失利益とは、被害者が死亡しなければ就労して得られたはずの賃金に対する賠償のことです。
以下の計算式によって計算します。
計算式) 基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
逸失利益を請求できる期間
逸失利益の労働能力喪失期間や就労可能年数は、後遺障害によって仕事に支障が生じる期間や、生きていれば働いて賃金を得られた期間のことです。
一般的には60歳や65歳で定年退職することが多いですが、実務では満67歳までの期間のことをいいます。
なお、逸失利益は将来の収入の減少分を一括で受け取る関係で、被害者が利息分得をしてしまうので、利息分得をしないようにライプニッツ係数という係数によって調整がされています。
12級13号や14級9号の場合
神経症状では、後遺障害等級12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」や、14級9号「局部に神経症状を残すもの」と認定される可能性があります。
これらの神経症状によっても労働能力に影響が生じうることから、逸失利益該当性を否定はされませんが、神経症状は時間経過により順化し、労働能力に影響が生じなくなると考えられていることから、12級の場合には10年、14級の場合には5年程度に労働能力喪失期間が制限される傾向にあります。
したがって、14級9号、12級13号の場合には、逸失利益を請求できる期間は制限されると考えておいた方がいいでしょう。
学生や幼児の場合
学生や幼児の場合には、症状固定時においても就労していないので、逸失利益を症状固定時からカウントすることができません。
よって、学生や幼児の場合には
基礎収入×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-就労開始年齢までのライプニッツ係数)
という計算式によって逸失利益を算定します。
なお、就労開始年齢は原則18歳ですが、基礎収入を大卒の平均賃金で計算する場合には、就労開始年齢は22歳となります。
計算例) 10歳の男子が事故によって後遺障害等級10級に認定された場合の逸失利益
545万9500円(令和2年賃金センサスの男性学歴計全年齢平均賃金)×27%(後遺障害等級10級の労働能力喪失率)×(27.1509(67歳まで(57年)のライプニッツ係数)-7.0197(18歳まで(8年)のライプニッツ係数))=2967万4697円
高齢者の場合
高齢者の場合に労働能力喪失期間を67歳までとすると、労働能力喪失期間が著しく短くなってしまいます。
なので、高齢者の場合には、67歳までの期間と、平均余命の2分の1を比較して、どちらか長い方の期間が労働能力喪失期間等とされています。
計算例)59歳の男性(年収600万円)が事故によって後遺障害等級8級に認定された場合の逸失利益
600万円×45%(後遺障害等級8級の労働能力喪失率)×9.9540(67歳までの年数8年より、平均余命の2分の1(12年)の方が長いため12年のライプニッツ係数)=2687万5800円
逸失利益を適切な期間認定してもらう2つの方法
逸失利益を適切な金額受け取るためには、労働能力喪失期間や就労可能年数を適切な期間認定してもらう必要があります。
この章では、逸失利益を適切な期間認定してもらう2つの方法について解説しています。
- 現在の就労状況、後遺障害の影響を適切に主張する
- ADRや訴訟を利用する
現在の就労状況、後遺障害の影響を適切に主張する
逸失利益の労働能力喪失期間は、後遺障害が仕事にどの程度影響を与えるのかを現したものとなっています。
したがって、現在の仕事の状況、後遺障害が仕事に与える影響を適切に主張する必要があります。
そのうえで、現在の仕事を何歳くらいまで続けられそうか、定年後の再就職の可能性はあるのか等についても主張した方がいいでしょう。
ADRや訴訟を利用する
後遺障害逸失利益について保険会社と交渉していると、後遺障害逸失利益の支払いを抑えたいがために労働能力喪失期間を限定的に主張してくることがあります。
保険会社からこのような主張をされた場合には、上記のように、後遺障害が仕事に与えている影響や、定年後の再就職の可能性等について主張していく必要があります。
もっとも、個人で保険会社と交渉しても適切な金額の逸失利益を獲得することは難しいため、上記のような主張をしても適切な期間の逸失利益を認めてくれない場合には、ADRを利用したり、裁判所に訴訟提起したりしましょう。
各手続きの特徴は以下の通りとなります。
特徴 | 手間 | ||
ADR | 加害者側に保険会社がついている場合にのみ使える。 被害者に有利な手続き | 裁判所を利用する手続と比べ、簡単に利用できる。 費用も低額。 | おすすめ |
調停 | 裁判所で話し合いを行う手続き 話し合いがまとまらなければ訴訟を提起する必要 | ADRよりは手間だが、訴訟よりは簡単に利用できる | あまりおすすめできない |
訴訟 | 裁判所に訴訟を提起する方法 最終的に判決が出るので、終局的解決ができる | 書面の提出や証拠の提出など型が決まっている 収入印紙代など費用もかかる | おすすめできない |
逸失利益の期間については、弁護士に交渉を依頼しよう
保険会社と被害者の方で交渉している際には、保険会社が特に何らの根拠もなく、後遺障害が仕事に影響しないなどとして、労働能力喪失率や労働能力喪失期間を制限してくることが多いです。
これに対して被害者の方が個人で適切な逸失利益の額を交渉して獲得することは困難です。
また、後遺障害が認定されている場合等は特に、慰謝料も自賠責基準と弁護士基準で金額に大きな違いが生じます。
したがって、後遺障害等級が認定されている場合には、示談交渉を弁護士に依頼するようにしましょう。
交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!
交通事故の被害に遭ってしまった場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。
そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。
したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
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弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。
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法律事務所によっては、報酬基準の違いで弁護士費用特約を利用できない場合もありますが、法律事務所Lapinでは基本的に弁護士費用特約を利用してご依頼いただくことが可能です。
まとめ
いかがだったでしょうか。逸失利益の期間が理解できましたでしょうか。
逸失利益の労働能力喪失期間や就労可能年数は原則として67歳までとされています。
もっとも、神経症状の場合にはこれが制限される例が多く、また学生や高齢者の場合には計算方法も異なってきます。
後遺障害等級が認定されている場合には弁護士に示談交渉を依頼するメリットが大きいので、一度は弁護士に相談するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。
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