被害者が交通事故で意識不明に!?将来のためにすべき3つのこと

救急搬送される

自転車やバイク、歩行者が交通事故の被害に遭い頭部を強打してしまうと、意識不明となってしまうことがあります。

意識不明となったとしても、それが短時間であれば特に問題はありませんが、長時間意識不明の状態が続いていると、重篤な後遺障害が残ってしまうこともあります。もっとも、家族が意識不明になってから適切な対応をしていなければ、残った後遺症に対して適切な賠償を受けられなくなってしまうケースもあります。

この記事では

  • 意識不明になるとはどういうことか
  • 被害者が意識不明の場合に将来のためにすべき3つのこと
  • 意識不明となった後に残る症状と後遺障害等級
  • 意識不明の場合の慰謝料の相場

について解説しています。

この記事を読めば、家族の方が意識不明となってしまった場合にやっておくべきことが理解できるでしょう。

交通事故で意識不明になるとはどういうことか

脳の紹介

頭部を強打して脳にダメージを負ってしまった場合には、意識不明となってしまうことがあります。

交通事故においては、車に乗車中の事故で意識不明となるケースは少ないですが、自転車やバイクに乗車中の事故であったり、歩行者が事故に遭ったりする場合などでは、交通事故の衝撃で地面に頭部を強打し、そのまま意識不明となってしまう場合があります。

意識不明となった場合には、適切な治療を開始するまでの時間も回復に影響を与えますので、交通事故被害者が意識不明の場合にはすぐに救急車を呼ぶようにしましょう。

6時間以上意識が回復しないと、後遺障害が残る可能性がある

交通事故で意識不明となったとしても、気絶のように一時的に意識を失っているだけで、すぐに回復するようなケースもあります。

もっとも、意識不明の状態が6時間以上経過するような場合には、脳に重大な損傷が生じている可能性が高く、意識回復までに数日かかったり、意識が回復したとしても重篤な後遺障害が残存する可能性が高くなります。

被害者が意識不明の場合に将来のためにすべき3つのこと

3つの選択肢

交通事故被害者が意識不明となって病院に運ばれたとしても、基本的には家族の方は何もすることができず、回復を祈ることしかできません。もっとも、意識が回復した場合の補償の対応や、意識が長期間回復しなかった場合の対応など、やるべきことはたくさんあります

この章では、家族の方が意識不明の時に将来のためにやるべき3つのことについて解説します。

医師に適切な治療をしてもらう

意識不明の場合には、基本的には救急搬送された病院で経過観察したり治療を行ってもらうことになります。

もっとも、救急搬送先の病院に長期間入院することは難しいですので、長期間意識が戻らない場合には、別の病院に転院する必要も出てきます。

その場合には、脳外科の治療が充実している病院に転院できるように事前に調べたりしておきましょう。

また、転院先の病院を選択する際には、お見舞いに行きやすい病院を選ぶようにしましょう。

事故前と事故後の被害者の状況を記録化しておく

意識不明となった場合には、脳にダメージを負っているせいで、事故前に通常はしない行動を取ったり、事故前と性格そのものが変わってしまっている可能性もあります。

もっとも、このあたりのことは被害者の家族の方が主張しなければ伝わりませんので、事故後の被害者の状況をよく観察し、事故前とどのように変わっているのか等についてしっかりと記録しておくようにしましょう。

長期間症状が回復しないなら成年後見人を選任する

長期間症状が回復しないで意識不明となってしまっている場合でも、事故に対する示談交渉を行っていく必要があります。もっとも、被害者の方が成人している場合には親権者が代理して示談交渉を行うこともできません。よってこの場合には、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、成年後見人ないし成年後見人が依頼した弁護士が相手方と示談交渉を行っていく必要があります。

したがって、意識が回復しない状態で示談交渉を進めたい場合には、被害者のために成年後見人の選任を申し立てるようにしましょう。

意識不明となった後に残る症状と後遺障害等級

首が痛い

意識不明から早期に回復した場合には問題ありませんが、回復までに長期間かかったような場合では、後遺障害が残ってしまう可能性があります。

この章では、脳にダメージを負って意識不明となってしまった場合に残ってしまう可能性がある後遺障害と、認定される可能性のある後遺障害等級について解説します。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、事故によって脳に外傷が生じた場合に、回復過程において生じる認知機能や人格変化等の症状のために、就労や生活の制限、社会復帰が困難となる障害を総称するもののことです。
高次脳機能障害は、被害者本人で認識することは困難ですので、家族や周りの方が事故前の被害者との変化に気付いてあげる必要があります。

高次脳機能障害の場合には、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があります。

高次脳機能障害の後遺障害

外傷性てんかん

てんかんとは、てんかん発作を繰り返す病気の総称のことであり、外傷によって脳の中枢神経が損傷したことを原因として発生するてんかんのことを外傷性てんかんといいます。
日常生活の中で急に発作が起こることによって、症状が残っていることの判断ができます。

症状としては

  • けいれん発作
  • 意識消失
  • 全身の筋肉の硬直

などがあります。

外傷性てんかんの症状が残ってしまった場合には、以下のような後遺障害等級に該当する可能性があります。

てんかんの後遺障害

遷延性意識障害

遷延性意識障害とは、脳挫傷等の頭部の外傷により、脊髄反射以外の反応が一切ない昏睡状態となってしまうことです。要するに「植物状態」といわれている状態のことを指します。

これは、3か月以上に渡り

  • 自力移動不能
  • 自力摂食不能
  • 糞便失禁状態
  • 意味のある発語不能
  • 簡単な従命以上の意思疎通不能
  • 追視あるいは認識不能

の6項目を満たす状態にあると認定された場合に、遷延性意識障害の診断がなされます。

遷延性意識障害となった場合には、基本的には常時介護を要するものとして、後遺障害等級第1級1号に認定されます。

交通事故で意識不明となった場合の慰謝料の相場

交通事故で意識不明となった場合に請求できる賠償金には以下のようなものがあります。

もし意識不明の被害者に後遺障害が残ってしまった場合には、もらえる示談金の相場は1000万円を超えてくるのであり、働き盛りの人や学生が後遺障害等級1級と認定された場合には、示談金の相場は1億円を超えてきます

ここでは特に金額が大きくなる、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益について詳しく解説します。

傷害慰謝料

これは、意識不明のために入通院を余儀なくされたことの精神的苦痛に対する賠償のことです。入通院の期間によって算定され、意識不明となるような重体を負った場合には、通常は別表Ⅰの表を参考に算定されます。

慰謝料

後遺障害慰謝料

意識不明から回復しても症状が残り、治療しても症状が残存する場合には、後遺障害等級が認定される可能性があります。

後遺障害等級が認定されると以下のように、後遺障害が残ったことに対する慰謝料を請求することができます。

後遺障害の慰謝料

後遺障害逸失利益

逸失利益とは、怪我の後遺症が残った場合に、その怪我のために将来の労働能力に影響が生じ、そのために将来獲得できる賃金が下がることに対する損害賠償のことです。

逸失利益は、自賠責保険による後遺障害等級の認定がされた場合に、その認定された等級に応じて請求できるものとなっています。

計算式)

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

という計算式によって逸失利益は計算されます。

そして、基礎収入は基本的には事故前年度の年収を用い、労働能力喪失率は下記の表を参考にして算定されます。

労働能力喪失率

労働能力喪失期間とは、後遺障害が仕事に影響を及ぼす期間のことです。本来なら定年とか終身雇用、再就職などもありますが、実務では原則として症状固定時の年齢から67歳までの年数を労働能力喪失期間としています。なお、高齢者の場合には、平均余命の2分の1の期間を労働能力喪失期間とすることもあります。

ライプニッツ係数とは、本来なら毎年受け取るはずの逸失利益を先に一括で受け取ることで、その金額に対する利息分被害者が得をするので、それを調整するための係数のことです。現行民法では、利息が3%としてライプニッツ係数を計算することになります。

例えば、40歳で年収500万円の人が高次脳機能障害により後遺障害等級第1級と認定された場合の逸失利益は

500万円×100%(労働能力喪失率)×18.327(27年に相当するライプニッツ係数)=9163万5000円

となります。

ここに、後遺障害等級第1級の場合の後遺障害慰謝料2800万円を足すと、もらえる賠償金は1億円を超えてきます

交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!

被害者の方が意識不明になってしまった場合には、場合によっては重篤な後遺障害が残ってしまうこともあり、そうなると賠償金の金額も数千万円になるケースもあります。もっとも、病院での治療段階から適切な対応をしていなければ、適切な示談金を獲得することはできません。また、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。

したがって、被害者が意識不明になってしまった場合には弁護士に依頼した方がいいでしょう。

交通事故では弁護士に示談交渉を依頼するメリットが大きい

弁護士に任せる

弁護士に示談交渉を依頼すると、保険会社との交渉を弁護士にすべて任せることができるため、交渉に対する心理的ストレスから解放されます。また、慰謝料について保険会社が採用している基準と弁護士が使用する基準では金額が大きく異なり、弁護士に交渉を依頼した方が最終的に受け取れる示談金も多くなります。

よって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットについては、以下の記事で解説しています。

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法律事務所Lapinが選ばれる理由!

弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。

法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。

また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。

法律事務所Lapinでは弁護士費用特約も利用可能!

自身の保険や、ご家族の保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、それを利用することによって、基本的に自己負担なく、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することができます(弁護士費用の300万円まで保険会社が負担するため)。また、弁護士費用特約はノンフリート等級なので、翌年の保険料にも影響はありません

もっとも、意識不明で後遺障害が残ってしまうようなケースでは、弁護士費用の金額が300万円を超えるケースもありますが、それだけ大きな賠償金を受け取れるということは、示談交渉が得意な弁護士に依頼した方がいいということですので、積極的に弁護士に依頼するようにしましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。意識不明となった場合の対応や認定される可能性のある後遺障害等級が理解できましたでしょうか。

まとめると、意識不明となった被害者のためにやっておくべきこととしては

  • 適切な治療を受けさせる
  • 事故前と事故後の被害者の状況を記録化しておく
  • 長期間症状が回復しないなら成年後見人を選任する

という3点です。

また、意識障害が続いてしまった場合には

  • 高次脳機能障害
  • 外傷性てんかん
  • 遷延性意識障害

の後遺症が残ってしまうこともあります。

意識不明となった場合には、このように賠償金も大きくなり、保険会社と交渉するのも大変ですので、示談交渉は弁護士に依頼するようにしましょう。

投稿者プロフィール

弁護士
弁護士 河井浩志
法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。