交通事故示談金の相場とは?計算方法や増額する4つのポイント
交通事故で示談金はいくらくらいもらえるのか疑問ではありませんか。
交通事故の示談金は、症状によってある程度相場が決まっており、怪我の内容によっては示談金の相場が1000万円を超えるようなケースもあります。
もっとも、適切な示談金を受け取る方法を知らずに示談してしまうと、相場よりも低い示談金しか受け取れず、最終的に数百万円も損してしまう場合もあります。
この記事では、交通事故の示談金、示談金の項目の計算方法、ケース別の示談金の相場、示談金を増額するための4つのポイント等について解説しています。
この記事でわかること
- 交通事故の示談金の内容
- 示談項目の計算方法
- ケース別の示談金の相場と具体例
- 示談金を増額する4つのポイント
目次
交通事故の示談金とは
交通事故の被害に遭った場合には、車の修理費用や、治療する際の治療費、交通費、仕事を休んだ場合の休業損害など、多数の損害が生じることになります。
この被害者の損害額や支払方法について加害者と交渉することを「示談交渉」といい、示談交渉が成立して加害者から支払われる金銭のことを「示談金」といいます。
そして、慰謝料は被害者の損害の内容の一つであり、示談金の中に含まれるものです。なので示談金と慰謝料は異なるものなので注意しましょう。
示談交渉:被害者の損害賠償の金額や支払方法について話し合うこと
示談金:示談交渉が成立して加害者から支払われる金銭のこと
示談金の項目の計算方法
示談金は示談してもらえる金銭のことであり、示談する際には、損害賠償項目ごとに金額を決めて、その金額を合計したものが最終的に示談金として支払われます。
示談金に含まれる損害賠償項目には以下のようなものがあります。
この章では、示談金の項目のうち、示談金に大きく影響する3つの損害項目である、慰謝料、休業損害、逸失利益についての計算方法を解説します。
また、計算方法には金額の低い順で、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準がありますが、ここでは一番金額が大きい弁護士基準について解説します。
自賠責基準 | 強制加入保険である自賠責保険が採用している基準 3つの基準の中で一番金額が低く、支払限度額も決まっている |
任意保険基準 | 各任意保険会社が決めている基準で公表はされていない 自賠責基準に近く、弁護士基準より金額が低く設定されている |
弁護士基準 | 裁判所が採用している基準 3つの基準の中で一番金額が大きい |
慰謝料
慰謝料とは、交通事故被害に遭ったことについての精神的苦痛に対する損害賠償のことです。
慰謝料には、怪我をして通院したことに対する慰謝料である「傷害慰謝料(入通院慰謝料ともいいます)」、治療をしても後遺症が残ったことに対する慰謝料である「後遺障害慰謝料」、被害者の方が死亡してしまったことに対する慰謝料である「死亡慰謝料」の3つの慰謝料があります。
傷害慰謝料 | 怪我をして入通院したことに対する慰謝料 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことに対する慰謝料 |
死亡慰謝料 | 被害者が死亡したことに対する慰謝料 |
傷害慰謝料
傷害慰謝料は、怪我をしたことについての精神的苦痛に対する慰謝料です。
もっとも、どのような怪我をすればどれくらいの精神的苦痛が生じるのか個々に判断することが煩雑なので、実務では「怪我の程度=入通院期間」と考えて、入通院期間によって慰謝料を計算することとしています。
具体的には、下記の表によって慰謝料を計算しており、骨折等の他覚所見がある場合には別表Ⅰ、むち打ち等の他覚所見がない場合には別表Ⅱを用います。
なお、これは全国的に用いられている基準ですが、大阪高裁管轄では大阪地裁の基準を用いたりします。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、治療を継続したけれども後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料のことです。
後遺障害については、治療終了時(症状固定時)に残っている症状について自賠責保険会社が後遺障害等級に該当するかどうか審査を行い、後遺障害認定要件に該当すると判断された場合に後遺障害等級として認定してもらえます。
後遺障害等級は重い方から1級から14級まであり、後遺障害慰謝料の金額は弁護士基準で以下の通りです。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、被害者の方が死亡してしまったことに対する慰謝料のことです。
これについては、被害者の方は死亡してしまっていて請求できないので、被害者の遺族の方が相続して加害者に対して請求していくことになります。
被害者の方が死亡した場合には、被害者の親族等も慰謝料を請求できますが、下記の弁護士基準の慰謝料の金額は、被害者本人の慰謝料と親族等の慰謝料を合計した金額となっています。
なお、被害者が死亡してしまった場合には、事故から死亡するまでの傷害慰謝料も別途請求することができます。
休業損害
休業損害とは、事故のけがのために仕事を休んでしまい、本来仕事をしてもらえるはずだった賃金がもらえないことに対する損害賠償のことです。
休業損害額の計算方法は、業種によって異なりますが基本的には以下の計算式によって算定します。
計算式) 日額×休業日数
会社員の場合
会社員の場合には、会社に休業損害証明書を作成してもらって休業損害を請求していきます。
会社員の場合の休業損害の計算方法は以下の通りです
計算式) 事故前3か月の給料÷90×休業日数
日額は、事故前3か月分の給料を90で割った金額で算出します。
休業日数は、仕事を休んだ日、有休を使用した日、遅刻早退した時間のことであり、代休は休業日数に含まれません。
なお、会社員の休業損害については、以下の記事でも解説しています。
主婦(主夫)の場合
主婦についても、他人のために家事をしていることに経済的価値があるとして、主婦業ができなかったことに対して休業損害を請求することができます。
主婦の場合には、どこかから給料をもらっているわけでもないので、日額は、事故前年度の賃金センサスの女性全年齢計学歴計の年収を365で割って算出します。
休業日数については、通院日数を休業日数として計算する方法もありますが、実際には通院していても家事の一部を行うことは可能だったので、怪我の程度から家事への影響割合を仮定して、逓減方式で算定することもあります。
計算例)通院期間60日。うち初めの30日の家事への支障割合が70%、残りの30日が40%と仮定した場合
(日額×30日×70%)+(日額×30日×40%)
なお、主婦の休業損害については算定が難しいので、弁護士に相談してみるのがいいでしょう。
主婦の休業損害については、以下の記事でも解説しています。
個人事業主の場合
自営業者の場合には、事故前年度の確定申告書を元に日額を把握します。
もっとも、自営業者の場合には、休業したこと等を証明してくれる人がいませんので、休業日数について争点となりやすいです。
通常は、通院日や、売上帳等から休業日数を特定して算定するなどします。
また、事故前3年分の平均所得と事故当年の所得を比べて、その差額分を休業損害として算定したりもします。
個人事業主の休業損害については、以下の記事でも解説しています。
アルバイト・パートの場合
アルバイト・パートについても、事故のために仕事を休めば休業損害を請求でき、基本的には以下の計算式によって算定します。
計算式) 事故前3か月の給料÷90×休業日数
この場合も、勤務先に休業損害証明書を作成してもらって休業したことを主張していきます。
もっとも、この場合に日額を90日で割って算出すると金額が低くなってしまうので、時給×1日の勤務時間、等によって日額を算定したりします。
アルバイト・パートの休業損害については、以下の記事でも解説しています。
無職の場合
無職の場合には、交通事故でけがをしたとしても、もともと就労しておらず、それによって賃金がもらえなくなるわけでもないため、原則として休業損害を請求することができません。
もっとも、求職活動を行っており、内定をもらっていたものの事故の怪我のために就労開始が遅れたような場合には、例外的に休業損害を請求できる余地があります。
逸失利益
逸失利益とは、怪我の後遺症が残った場合に、その怪我のために将来の労働能力に影響が生じ、そのために将来獲得できる賃金が下がることに対する損害賠償のことです。
逸失利益は、自賠責保険による後遺障害等級の認定がされた場合に、その認定された等級に応じて請求できるものとなっています。
計算式) 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
という計算式によって逸失利益は計算されます。
基礎収入
基礎収入は、原則として事故前年度の年収を使います。
会社員なら源泉徴収票に記載されている金額、個人事業主なら確定申告の申告所得、主婦なら賃金センサスの平均賃金のことです。
なお、学生や若年労働者の場合にも、賃金センサスの平均賃金を用います。
労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺障害が労働に与える影響のことです。
実際には後遺障害によりどれくらい労働に影響が出るのか算定することが困難であるため、後遺障害等級に応じて、参考となる労働能力喪失率が決められており、それに従って労働能力喪失率を決めます。
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失期間とは、後遺障害が仕事に影響を及ぼす期間のことです。
本来なら定年とか終身雇用、再就職などもありますが、実務では原則として症状固定時の年齢から67歳までの年数を労働能力喪失期間としています。
なお、高齢者の場合には、平均余命の2分の1の期間を労働能力喪失期間とすることもあります。
また、むち打ち症等の神経症状で後遺障害等級が認定された場合には、14級の場合には5年、12級の場合には10年に労働能力喪失期間が制限されます。
ライプニッツ係数とは、本来なら毎年受け取るはずの逸失利益を先に一括で受け取ることで、その金額に対する利息分被害者が得をするので、それを調整するための係数のことです。現行民法では、利息が3%としてライプニッツ係数を計算することになります。
交通事故の示談金の相場をケース別に解説
交通事故の示談金の項目ごとの計算方法がわかったと思いますので、ここではケース別に示談金の相場を解説していきます。
- むちうち
- 打撲
- 骨折
むちうちの場合
むち打ちとは、事故によって首などが鞭のようにしなり、それによって引き起こされる頸椎捻挫や腰椎捻挫のことをいいます。
外傷性頚部症候群などとも診断されます。
交通事故で不意な追突事故などによりむち打ちとなった場合には、ある程度の期間治療が必要となり、3~6か月ほど通院するケースが多いです。
ここでは、通院6か月した場合の示談金の相場を解説します。
慰謝料 | 89万円 |
後遺障害慰謝料 | 110万円 (後遺障害等級第14級の場合) |
後遺障害逸失利益 | 500万円×5%×4.58=114万5000円(年収500万円の場合) |
合計 | 313万5000円 |
となります。
なお、これは自賠責保険によって後遺障害等級第14級と認定された場合の相場となります。
このほかに、通院交通費、休業している場合には休業損害も請求することができます。
打撲の場合
打撲の場合には、むちうちのような捻挫と比べると早期に治癒するケースが多いです。
通常は、1~2か月程度で完治して治療終了することとなります。
通院2か月した場合の示談金の相場は
慰謝料 36万円
となります。
このほかに、通院交通費、休業している場合には休業損害も請求することができます。
なお、打撲の場合には後遺障害が残らないことが多いので、後遺障害慰謝料や逸失利益は請求することができないケースが多いです。
骨折の場合
骨折の場合には、骨折の部位や程度にもよりますが、骨折してから骨が形成され、リハビリしてもとの生活に戻るまでに通常6か月~1年はかかります。
ここでは1年通院したケースの示談金の相場を解説します。
慰謝料 | 154万円(入院していない場合) |
後遺障害慰謝料 | 290万円(骨折により可動域制限が生じて後遺障害等級第12級に認定された場合) |
後遺障害逸失利益 | 500万円×14%×18.327=1282万8900円(年収500万円、症状固定時40歳の場合) |
合計 | 1726万8900円 |
となります。
なお、これは後遺障害が残り、自賠責保険によって後遺障害等級が認定された場合の相場となります。
このほかに、通院交通費、休業している場合には休業損害も請求することができます。
また、事故のために入院している場合には慰謝料の金額はもっと大きくなりますし、残った後遺障害がより重度であれば、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額ももっと大きくなります。
交通事故示談金を増額するための4つのポイント
交通事故示談金には相場が決まっていますが、何も考えずに行動していると、相場通りの示談金を受け取れない可能性があります。
ここでは、示談金を増額するために注意すべき4つのポイントについて解説します。
- しっかりと通院する
- 後遺障害の申請を検討する
- 弁護士に示談交渉を依頼する
- 早期に示談金を受け取りたいがために焦って示談しない
しっかりと通院する
交通事故の慰謝料は怪我をした場合に受け取れますが、怪我をしただけではダメで、怪我に対して通院をしてその入通院期間をもとに慰謝料は計算されます。
したがって、自己判断で通院を怠ってしまうと、慰謝料が低く計算されてしまいます。
特に、むちうちや打撲のような軽傷の場合には、自己判断で治療を終了してしまう人も多いですが、適切に通院をしていないとその分適切な慰謝料を受け取れなくなってしまいます。
もちろん、慰謝料目的で過剰通院することはダメですが、医師と相談の上、しっかりと通院するようにしましょう。
後遺障害が残っている場合には後遺障害の申請を検討する
後遺障害が残っていてもそれだけでは後遺障害慰謝料や逸失利益は請求できず、自賠責保険から後遺障害等級を認定されて初めて後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。
また、後遺障害の認定をしてもらうためには、自賠責保険に対して適切に後遺障害等級認定申請を行う必要があります。
この申請をせずに示談してしまった場合に、後から後遺障害に対する損害賠償を求めていくことは困難ですので、治療が終わっても後遺障害が残っている場合には、示談前に自賠責保険に対して後遺障害等級認定申請することを検討しましょう。
なお、後遺障害の申請は、保険会社に任せる「事前認定」と、自身ないし弁護士に依頼して進める「被害者請求」という2つの方法があります。
示談交渉を弁護士に依頼する
最終的に示談金をいくらもらえるのかは、示談項目の金額の総額によって決まります。
治療費や交通費などの実費については弁護士が交渉したからといって金額が増額できるわけではありませんが、休業損害や慰謝料については、算定基準が保険会社と弁護士で異なるため、弁護士が示談交渉することによって金額の増額が見込めます。
特に、弁護士費用特約が使用できる場合には、基本的に自己負担なしで弁護士に示談交渉を依頼することができるため、相場通りの示談金を獲得するために弁護士に示談交渉を依頼するようにしましょう。
なお、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットについては以下の記事で解説しています。
早期に示談金を受け取りたいがために焦って談しない
早期に示談金がほしいあまり、交渉もせず早期に示談して示談金を受け取っているケースがあります。
もっとも、保険会社から提示してくる示談金は、自賠責基準ないし任意保険基準で算定された金額であり、相場よりもかなり低く見積もられています。
したがって、保険会社が提示してきた示談金に対して交渉もせずに示談してしまった場合には、相場よりも低い示談金しか受け取れないでしょう。
保険会社から示談の提示を受けた場合には、その金額が適切かどうか調べ、場合によっては弁護士に示談交渉を依頼することも検討しましょう。
交通事故の相談は法律事務所Lapinへ!
交通事故の被害に遭ってしまった場合には、適切な対応を行わなければ、適切な慰謝料を受け取れない、示談金を低く見積もられてしまうなどの不利益を被ってしまいます。そして、保険会社との交渉では、慰謝料の計算や、その他の損害額の計算、過失割合の交渉など、専門的な知識が求められることになります。
したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
交通事故では弁護士に示談交渉を依頼するメリットが大きい
弁護士に示談交渉を依頼すると、保険会社との交渉を弁護士にすべて任せることができるため、交渉に対する心理的ストレスから解放されます。また、慰謝料について保険会社が採用している基準と弁護士が使用する基準では金額が大きく異なり、弁護士に交渉を依頼した方が最終的に受け取れる示談金も多くなります。
よって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼した方がいいでしょう。
法律事務所Lapinが選ばれる理由!
弁護士といっても、交通事故に精通している弁護士や、交通事故案件をあまり担当したことがない弁護士もいます。そして、交通事故の示談交渉では、交通事故の専門的知識や、保険会社との交渉経験等、弁護士においても知識の差によって結果が変わってしまいます。
法律事務所Lapinでは、交通事故の被害者側の依頼を500件以上担当した弁護士が交通事故の示談交渉を対応しますので、交通事故の専門的知識や経験は、他の弁護士に引けを取りません。
また、大手で大量に事件処理を行っている事務所では、事務員が担当として就き、弁護士となかなか話ができないケースもありますが、法律事務所Lapinでは弁護士が依頼者との連絡を行いますので、そのような心配はございません。
法律事務所Lapinでは弁護士費用特約も利用可能!
自身の保険や、ご家族の保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、それを利用することによって、基本的に自己負担なく、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することができます(弁護士費用の300万円まで保険会社が負担するため)。また、弁護士費用特約はノンフリート等級なので、翌年の保険料にも影響はありません。
法律事務所によっては、報酬基準の違いで弁護士費用特約を利用できない場合もありますが、法律事務所Lapinでは基本的に弁護士費用特約を利用してご依頼いただくことが可能です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
示談金の相場や計算方法、相場通りに受け取る方法が理解できましたでしょうか。
まとめると、示談金を相場通りに受け取るためには
- しっかりと通院する
- 後遺障害が残っている場合には後遺障害の申請を検討する
- 示談交渉を弁護士に依頼する
- 早期に示談金を受け取りたいがために低額な金額で示談しない
という4つのポイントを守ってください。
示談金の相場などが知りたい方は、通院が終わった段階で一度弁護士に相談するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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法律事務所Lapin代表弁護士。東京弁護士会所属。
都内大手の法律事務所2か所で勤務し、法律事務所Lapin(ラパン)を開設。依頼者が相談しやすい弁護士であるよう心掛けており、もっぱら被害者の救済のために尽力している。
主な取り扱い分野は、交通事故、相続、離婚、養育費、不貞慰謝料、B型肝炎訴訟、労働問題、削除請求、刑事事件、著作権侵害事件。
特に交通事故については、累計500件以上の解決実績がある。
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